医院による有名ブランド無断使用に厳しい判断
ソウル中央地方法院は、韓国のある皮膚科医院が「CHANEL」標章を使用した行為に対し、全世界的に周知・著名な商標を希釈・汚染するおそれがあることを根拠に使用差止判決を下した。
被告はエステティックサービスを専門に行う皮膚科医院で、アンチエイジング効果に優れた「NCTF 135注射」を「シャネル注射」と称して皮膚美容サービスを提供していた。
中央地方法院は、CHANEL標章は国内で周知著名な商標であり、その識別力が非常に高いと判断した。また、このようなCHANEL製品の高い識別力によって、例外的にCHANEL標章の保護範囲はその商品・役務と類似の商品・役務を超えて拡張されると判断した。
中央地方法院は、被告が「シャネル注射」のうち「シャネル」部分を太字で強調し、「フランス名品 奇跡のSKIN BOOST」というキャッチコピーを使うなど、世界的に著名なラグジュアリーブランドであるCHANELとの関連性を強調することでCHANEL標章の周知著名性にフリーライドする意図が明らかであると指摘し、被告が市場で通常的に流通する商品や役務と関連しCHANEL標章を使用する行為は、高級かつ希少価値があるCHANEL商品に対する需要者の購買意欲を低下させるおそれがあるので、被告の行為はCHANEL標章の識別力や名声を害すると判断した。
中央地方法院は、被告の行為はCHANEL標章を希釈・汚染する行為として不正競争防止および営業秘密保護に関する法律第2条第1号(ハ)目の不正競争行為(いわゆる『希釈化』規定)に該当すると判断し、「CHANEL」または「シャネル」を営業標識として表示または使用する被告の行為に対して差止を命じた。
上記の判決は、標章の著名性が非常に高い場合は、商標権者の事業と直接的な関連性のない商品・役務に使用する侵害者に対しても、韓国で強力な法的対応が可能であるという事実を示している。
[情報元]KIM & CHANG IP Trademark/Design Legal Updates | Korea (2022.10.27)
[担当]深見特許事務所 原 智典