第35類「販売促進」と小売役務に関する最高人民法院の判断
1.事案の概要
原告である「華潤集団」は、1992年にスーパーマーケットを開業して以来、中国全土の多くの省、市で3,000店以上のスーパーマーケットを経営しています。同社の登録第776090号「華潤」及び第3843561号「華潤万家」の商標は、登録以来、スーパーマーケット経営において継続的に使用されており、長期にわたる使用と宣伝を経て、関連業界で比較的高い知名度を有していました。「華潤」の商号は多くの関連業界で社会大衆に広く知られていたといえます。
これに対し、被告である「成都華潤灯飾」は、照明の卸売・小売サービスに従事しており、2002年に「華潤」を企業商号として登録、店舗看板、製品ラベル、宣伝・広告などにおいて「華潤灯飾」を使用していました。
華潤集団は、成都華潤灯飾の上記行為が同社の登録商標の独占権を侵害するだけでなく、不正競争行為を構成するとして、成都中等法院に提訴し、侵害行為の差止め及び損害賠償を求めました。
2.判決の経緯
一審の段階で成都中級法院は、被告による「華潤灯飾」の使用は商標的使用ではなく、かつ当該商標を使用した小売サービスは、登録商標の指定役務「販売促進(他人のため)」と同一または類似ではないと判断しました。従って、商標権侵害行為は成立していないと認定し、同時に、被告の経営者の息子が2001年の出生時に華潤と名付けられたことから、被告による「華潤」商号の登録と使用は正当性を有し、不正競争を構成しないとも認定し、原告のすべての訴訟請求を棄却しました。
その後、原告・華潤集団は一審判決を不服として四川高等法院に上訴しました。二審法院も原告の請求を認容せず、上訴を棄却しました。
これを受け、原告・華潤集団は一審、二審の判決を不服とし、最高人民法院への再審請求を行いました。
最高人民法院は、最終的に被告が商標権侵害および不正競争を構成すると認め、一審、二審判決を破棄し、被告に対し、第35 類「販売促進(他人のため)」についての登録商標の侵害行為の即時停止、「華潤」の文字を含む企業名称の使用停止、企業名称の変更、原告の経済的損失と合理的費用を賠償することを命じる判決を下しました。
3.本判決の意義
本件は、商標の民事権利侵害事件において商品の卸売・小売サービスと第35類「販売促進(他人のため)」が類似するサービスを構成するか否かについて、最高人民法院が初めて肯定的な姿勢を表明したものと思われます。最高人民法院は、再審判決の中で、被告は消費者の便宜を図るため、購入したさまざまなブランドの照明を分類し、統一して販売しており、「華潤灯飾」は上記照明製品の販売のために使用されるサービスマークであるといえ、このような販売形態は、原告登録商標の指定役務「販売促進(他人のため)」と重複があり、両者は類似するサービスを構成し、同類の事件に対して高い参考価値と強い指導的意義を有しているとしています。
[情報元]集 佳 中 国 知 財 情 報 NO.186
[担当]深見特許事務所 原 智典