Instagram, 自社の略称と類似する‘INSTA MODEL’に対する商標権無効訴訟にて勝訴(特許法院 2020ホ4464 判決)
1.事案の概要
被告は2016年2月24日に下記の本件商標を出願・登録し、自身のフェイスブックページを通して「インスタグラム上のインフルエンサー及びモデルの発掘事業を行う」と発表しました。被告の目的は、インスタグラムで活動する有名人と企業を連結して広告紹介料を受け取る事業を運営することでした。
原告のInstagram は下記の先使用商標を理由に本件商標登録の無効審判を特許審判院に請求しましたが、審判院は「商標間に密接な関係性があるかのように誤認・混同する余地がない」としてこれを認容しませんでした。
本件商標(被告の登録商標) |
原告の先使用商標 |
上記審決に対して原告が審決取消訴訟を提起すると、特許法院は原告の主張を受け入れ、原審決を取消しました(特許法院 2020ホ4464 判決)。
2.判決の要旨
判決では以下のように判断されました。
(1)商標の類否
先使用商標の使用期間、メディアでの報道及びインターネットを通して広まった周知度等を考慮すると、原告の先使用商標は、本件商標の出願日時点で既にSNSの商標として、国内外の需要者に少なくとも特定人の商標であると認識されていた。
また、先使用商標は全体として称呼する場合「イン/ス/タ/グ/ラム」と長い5音節からなり、全体称呼が一般需要者に不便である。さらに、簡略化された称呼や観念により商標を記憶しようとする一般需要者の傾向があり、実際にインターネット上で略称使用が多く見られる。このため、先使用商標は「Insta」部分のみに略称されるということができる。そして、本件商標の「MODEL」部分は、指定役務との関連で識別力がないため、当該部分を除いて両商標を比較すると、これらは共に「インスタ」と称呼されて、称呼及び観念が同一であるため互いに類似する。
(2)不正の目的
本件商標の指定役務のうち「広告及びマーケティング業」等は、先使用商標の使用役務である「SNS提供業」と類似するものであり、経済的な関係が認められる点、また、被告が本件商標を出願した当時、先使用商標の存在を十分に認知可能であったはずであり、その上で「インスタグラム上で活動するモデル」という意味で使用するなど、先使用商標に化体された営業上の信用を利用しようとした点などを総合的に考慮すると、本件商標は、先使用商標に存在する営業上の信用等に便乗しようとする、不正な目的で使用する商標に該当する。
以上より、本件商標は無効とされなければならない。
3.本判決の意義
本判決は、需要者の間で略称されている事情を考慮し、その略称を含めて構成された登録商標と(略称ではない元々の)使用商標が類似すると判断されたことに意義がある判例であると思われます。なお、本特許法院判決は、商標権者である被告が大法院に上告しなかったため、確定しています。
[情報元]Lee International IP & Law | News Letter Autumn 2021
[担当]深見特許事務所 原 智典