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LEGOの勝利 ― 技術的機能を有する意匠に希望か

 技術的機能を有する意匠の保護が制限される裁判事例がますます多くなっていますが、ECJの24.3.2021(T-515/19)の判決からは多少の希望を感じます。

 2010年にデンマーク企業のLego A/Sは下記の共同体意匠出願をしました。

 2016年にDelta Sport Handelskontor GmbHは、上記の意匠登録に対して、その意匠のすべての外観的特徴が専ら技術的機能によってのみ律せられているとして、無効の宣告を申請をしました。EUIPOの審判部は、この申請を認容して上記意匠登録に対して無効を宣告しました。

 しかしながら、ECJは、この決定を破棄しました。まず、EUIPOの審判部は、LEGOが主張する特定の例外事項を審理していませんでした。例外規定では、何れか一方の製品の機能を発揮させるには、意匠が組み込まれ又は施された製品を別の製品に機械的に連結し、又は当該別の製品の中かその周囲若しくはこれに接触させて当該製品を設置する必要がある場合であって、そのような連結又は設置を可能にするためには、当該製品の外観的特徴の形状と寸法を正確に再現しなければならないときの、当該製品の外観的特徴にも意匠権は存在し得るとされています。また、おそらく更に重要なことに、もしすべての外観的特徴が技術的機能によってのみ律される場合には、無効の宣告がなされるでしょう。しかしながら、審判では、審判部はモジュールの滑らかな表面やその部分が技術的機能を有いているかどうかの問題を十分には考慮していませんでした。

 本判決により、決して技術に係る意匠の近年の傾向が完全に覆されるものではありません。しかしながら、これにより、当局は少なくとも意匠の外観的特徴をよく観察し、それらの技術的機能についてチェックするようになります。技術に係る意匠の小さな希望にはなると思われます。

[情報元]MAIWALD NEWSLETTER | June 2021
[担当]深見特許事務所 藤川 順