中国第4次改正専利法の施行に係る審査業務の経過措置
中国国家知識財産権局は、「第4次改正専利法の施行に係る審査業務の経過措置」を発表しました。
(この経過措置については、弊所ウェブサイトの「国・地域別IP情報」の、中国関連の2021.6.1付配信記事において、国家知識産権局(CNIPA)Webサイトの情報に基づく速報をすでに掲載しています。)
2021年6月1日に施行された中国第4次改正専利法(以下「改正専利法」)について、改訂中の「実施細則」が施行されるまでの経過措置として、中国国家知識財産権局は2021年5月25日、「改正後の専利法施行に関する関連審査業務処理暫定弁法」(以下、「経過措置」)を公表しました。この経過措置は11箇条からなっており、意匠制度、出願手続き、医薬専利制度、専利権の保護·実施に関連する細則を、該当する専利法の条項との関係に言及する形で規定しています。
経過措置の内容は、以下のとおりです。
1.意匠制度関連
(1)部分意匠出願制度の創設(経過措置第1条)
経過措置第1条において、改正専利法第2条第4項の改正により創設された部分意匠制度に基づく部分意匠出願を、2021年6月1日より、紙またはオフライン電子出願により提出できることが規定されています。提出された部分意匠出願の審査は、改正専利法実施細則の施行後に行われます。
(2)意匠出願の国内優先権制度の創設(経過措置第3条)
改正専利法第29条2項で意匠出願の国内優先権主張制度が創設されたことに関連して、経過措置第3条に、2021年6月1日より、国内意匠出願に基づく優先権主張が認められることが規定されています。国内優先権主張出願および先行意匠出願の審査は、改正専利法実施細則の施行後に行われます。
(3)意匠専利権の存続期間延長に関連する規定(経過措置第10条)
改正専利法第42条1項で、意匠専利権の存続期間が15年に延長されたことに関連して、経過措置第10条において、出願日が2021年5月31日以前の意匠専利権の存続期間は、出願日から起算して10年であることが明記されています。
2.出願手続き関連
(1)優先権証明書の提出期限改訂に関連する規定(経過措置第4条)
改正専利法第30条において、「発明専利、実用新案専利の優先権を主張するときは、最初の出願日から16か月以内に、また意匠専利の優先権を主張するときは、最初の出願から3か月以内に、最初の出願時の出願書類の謄本を提出しなければならない」と規定されたことに関連して、経過措置第4条において、出願日が2021年6月1日以降の出願について、出願人は、改正専利法第30条に基づき最初の出願の優先権証明書類の謄本を提出できることが規定されています。
(2)新規性喪失例外関連規定(経過措置第2条)
新規性喪失の例外を規定する改正専利法第24条において、新規性を喪失しない場合として、「国家の緊急事態又は非常事態が発生したときに、公共利益のために初めて公開した場合」(同条第1項)が加えられたことに関連して、経過措置第2条に、出願日が2021年6月1日以降の専利出願について、この場合に該当することを主張できることが規定されています。当該専利出願の審査は、改正専利法実施細則の施行後に行われます。
(3)信義誠実原則および原子力変換関連発明の審査に関する規定(経過措置第9条)
改正専利法第20条第1項において信義誠実の原則が明文化され、第25条第1項第5号において、専利権を付与されない発明に原子核の変換方法が追加されたことに関連して、2021年6月1日より、専利の予備審査、実体審査、不服審判段階では、信義誠実原則、ならびに、発明が原子核変換方法およびこれによって得られた物質に関わるかどうかについて、審査することが義務付けられることになりました。
3.医薬専利制度関連(経過措置第6条)
改正専利法において新設された、新薬発売審査承認を得た発明専利の権利期間の補償を規定する第42条3項に関連して、経過措置第6条に、2021年6月1日より、新薬関連発明専利について、専利権者は、新薬販売許可後の3ヶ月以内に、書面をもって専利権の存続期間の補償を申請できることが規定されています。
4.専利権の保護·実施関連
(1)被疑侵害者による専利権評価報告書の申請に関する規定(経過措置第8条)
改正専利法第66条第2項において、被疑侵害者も自発的に専利権評価報告書を提出できることが規定されたことに関連して、経過措置第8条において、2021年6月1日より、権利侵害と訴えられた者は、実用新案専利または意匠専利について、専利権評価報告書の作成を国家知識産権局に申請できることが規定されています。
(2)開放許諾制度に関連する規定(経過措置第7条)
改正専利法第50条(新設)において新たに開放許諾制度が制定されたことに関連して、経過措置第7条において、2021年6月1日より、専利権者は、自由意思で、紙により開放許諾を宣言できることが規定されています。その宣言の審査は、改正専利法実施細則の施行後に行われます。
(3)新薬に関する発明専利の専利権存続期間延長に関連する規定(経過措置第6条)
改正専利法第42条第3項(新設)に規定された、新薬発売審査承認を得た発明専利の権利期間の補償に関連して、経過措置第6条において、権利付与公告日が2021年6月1日以降の発明専利について、権利付与公告日より3ヶ月以内に、書面をもって、専利権存続期間の補償を申請できることが規定されています。その申請の審査は、改正専利法実施細則の施行後に行われます。
5.本経過措置の施行
経過措置第11条に、本措置が2021年6月1日から施行されることが明記されています。
[情報元]
1.集佳中国知財情報 特集 May 27, 2021「改正後の中国専利法の実施に係る暫定弁法の概要」
2.Linda Liu & Partners IPニュース(May 27, 2021)に添付された
「中華人民共和国特許法(第4次改正法)条文(日本語版)」および
「改正特許法の施行に係る審査業務の経過措置について」
3.CPA Newsletter 2021 Issue 3
4.China Sinda Newsletter, 2021 Issue 1
[担当]深見特許事務所 野田 久登