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CAFCは、特許審判部によるIPR開始拒否の決定に対して職務執行命令の裁判管轄を有すると判断しました。

Mylan Laboratories Ltd. v. Janssen Pharmaceutica, N.V., Case No.20-1071(Fed. Cir. 2021年3月12日)

1.事件の概要
 米国連邦巡回控訴裁判所(the US Court of Appeals for the Federal Circuit: CAFC)は、IPR(inter partes review:当事者系レビュー)の開始を拒絶した特許審判部の決定に対する直接の上訴を検討する管轄権は有しないものの、その職務執行命令の管轄(mandamus jurisdiction)の下で審判部の決定を検討できる、と結論付けました。

2.事件の経緯
(1)事件の発端
 2019年、Janssenは、Mylanがある特許を侵害したとして、Mylanを地方裁判所に訴えました。
(2)IPRの申立
 その後6ヶ月経たないうちに、Mylanはその特許のIPRを審判部に申立てました。Janssenは、IPRは審判部のリソースの非効率的な使用になってしまうであろうと主張し、IPRの開始に反対しました。なぜなら、特許の有効性に関してIPRの申立と同一の争点に関係する2つの地方裁判所の訴訟(1つはMylanが関与し、もう1つは第三者が関与する)が同時に係属していたからです。Janssenはまた、IPRの最終決定の前に、これらの地方裁判所での訴訟が最終判決に達する可能性が高いと主張しました。
(3)特許審判部の判断
 審判部はJanssenに同意し、IPRの開始を拒否ました。
(4)CAFCへの上訴
 MylanはCAFCに控訴するとともに、職務執行命令による救済(mandamus relief)も要求しました。

3.CAFCの判断
(1)控訴人の主張
 控訴審において、Mylanは、Mylanが関与していない別の地方裁判所の訴訟のタイミングに基づいてIPRの開始を拒否するという審判部の決定は、憲法上の権利および適正手続き(due process)の権利を損なうと主張しました。
(2)CAFCでの争点
 控訴の実体審理に取り組む前に、CAFCは裁判管轄に関する以下の2つの質問に対処しました。すなわち:
 ① CAFCがMylanの直接の上訴に対する裁判管轄を有するかどうか? および
 ② CAFCが職務執行命令の請願(mandamus request)に対する裁判管轄を有するかどうか?
と言うことです。これら2つの質問について、CAFCは以下のように判断しました。
 質問①について:
 CAFCは、St Jude Medical v. Volcano事件(St Jude Medical, Cardiology Division, Inc. v. Volcano Corp., 749 F.3d 1373 (Fed. Cir. 2014))におけるCAFCの判決に依拠し、IPRの開始を拒否する決定は直接の控訴での審理対象にはならないと判断しました。
 質問②について:
 CAFCは、司法審査は、特別な状況、特に申立の拒否を伴う状況で可能であると結論付けました。CAFCは、「我々の将来の裁判管轄権を保護するために、我々は、IPRの開始を否定する職務執行権限に対する請願を検討する管轄権を持っている」と述べました。
(3)CAFCの結論
 職務執行命令の請願について管轄権があると判断したCAFCは、本案の実体内容に目を向けました。CAFCは、職務執行命令の請願が手続開始を拒否する決定に異議を申し立てるものである場合は、関連する法令が審判部に多大な裁量権を与えているため、そのような請願が職務執行命令の要件を満たすことは特に難しいと説明しました。CAFCは、もっともらしい憲法上の主張を除いては、審判部による開始の否定の見直しの可能性はないと結論付けました。
 CAFCは、Mylanが手続き上の適正手続きによる請求に必要な「生命、自由または財産」の剥奪を特定しなかったため、Mylanには明確で議論の余地のない救済の権利がなく、そしてまた憲法上の救済のためのもっともらしい請求を述べなかったと認定しました。CAFCはまた、申立人が当事者である同時係属中の訴訟のみに基づいてIPRの申立てを開始するかどうかを審判部に検討させる基本的権利がないため、実体的な適正手続きによる請求はなかったと認定しました。したがって、CAFCはMylanの申立を却下しました。

[情報元]McDermott Will & Emery IP Update | March 24, 2021
Mylan Laboratories Ltd. v. Janssen Pharmaceutica, N.V., Case No.20-1071(Fed. Cir. 2021年3月12日)判決原文
[担当]深見特許事務所 堀井 豊