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類似群が異なる商品間に類似性が認められるとして無効とされた事例

 アイコン(ICON)社は世界的に有名なフィットネス機器のブランドであり、iFITはアイコン社傘下のサブブランドで、主にフィットネス製品に付随するスマートトレーニングシステムやスマートウェアラブル機器などに用いられています。アイコン社は、商標「iFIT」について、第28類の商品「トレーニング機器」、「フィットネスジム機器」などを指定した商標登録を有しています。
 アイコン社は、第三者である曹某が有する第28類の商品「知育玩具、スポーツ用ボール、リハビリ機器、フィットネス機器、加圧機器、トレーニング機器、スポーツ機器、ランニング補助機器、登山用具、合成樹脂舗装トラック」を指定した商標「ifitfun」の商標登録に対して、上記商標「iFIT」の商標登録を引用して無効審判を請求しました。
 国家知識産権局は審査の結果、曹某の商標登録について、その指定商品中、引用商標と同一の類似群に属する「トレーニング機器、リハビリ機器、フィットネス機器、加圧機器」の登録を無効とし、同一の類似群には属さないその他の商品「知育玩具、スポーツ用ボール、スポーツ機器、ランニング補助機器、登山用具、合成樹脂舗装トラック」の登録を維持するとの審決を発しました。アイコン社は、この審決に対し、取消訴訟を提起しました。
 北京知識産権法院は審理の結果、判決において次のように認定しました。
「係争商標の使用が認められた「知育玩具、スポーツ用ボール、スポーツ機器、ランニング補助機器、登山用具、合成樹脂舗装トラック」商品は、引用商標が使用を認められた関連商品と「類似商品・サービス区分表」上の類似群が異なるが、機能・用途、販売経路、消費対象などの面で一定の重複性または比較的強い関連性があり、同一または類似の商品を構成する。また、第三者による係争商標の登録行為は主観的に善意とは言いがたく、かつ原告およびその製品の知名度、引用商標の識別性を考慮すると、関連する公衆に係争商標の商品の出所について誤認または混同を生じさせやすい。従って、係争商標は引用商標と同一または類似商品に照らし類似商標を構成し、商標法第30条、第31条の規定に違反する。法に基づき無効とすべきであり、審判被請求人に対する裁定を取り消すとともに、国家知識産権局に改めて裁定を下すよう命じる。」
 商標登録の可否や商標権の権利範囲を審理する案件では通常、「商標登録用商品・サービス国際分類表」、「類似商品・サービス区分表」を参考にして商品またはサービスの類否が判断されます。しかし、商品およびサービスの項目は頻繁に更新されることから、商品またはサービスの類否の判定もそれにしたがって調整されます。商標登録の無効審決取消訴訟では、具体的な取引実情を踏まえ、事案ごとに個別に審理されます。本判決では商品自体の特徴、係争商標の登録者の主観的意図、実際の使用状況、混同の可能性など踏まえて総合的に判断されました。本事案は、同様の案件の参考になるものと思われます。

[情報元]北京集佳知識産権代理有限公司 中国知財情報 |28 January 2021
[担当]深見特許事務所 藤川 順