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“赤い丸印”を有するフライパンは商業的出所(commercial origin)を示すか

 Tefal社は、英国において第21類「フライパン及びその関連商品」について下記の商標を出願し、獲得識別力の主張を行いましたが本願は拒絶されました。
 
 Tefal社は2000年以降4,200万台以上のフライパンを販売し、純売上高は3億4,000万ユーロ(約444億円)を超えています。また、過去10年間、英国での広告に2,000万ポンド(約30億円)以上を費やし、赤い丸印を付した商品は主要なメディアでも紹介されていました。さらに、英国内の400人を対象にしたアンケートでは、60.25%の回答者が赤い丸印からTefal社を思い浮かべるとの結果であり、競合の多い市場では統計的に有意といえる結果でした。
 しかしながら、審査官は、これらの証拠からでは赤い丸印が出所識別標識として認識されているとは認められないと判断しました。特に、上記アンケートは、判例法が要求する商標としての実体的な認知を問うものではなく、調理器具分野の大手企業に対する認識と連想を示すに過ぎないと評価されたようです。また、審査官は赤い丸印が鍋の温度に応じて変化する熱表示部であり、技術的機能と切り離すことができない点を指摘しており、この点も否定的な評価がなされています。
 獲得識別力を証明することは、需要者に認知されている著名な商標であっても困難な作業といえます。獲得識別力を証明するためには、需要者が標章から特定の企業を連想するだけでなく、商業的出所を識別するのに需要者がどれだけその標章に依拠しているかに焦点を当てた証拠を提出する必要があるといえます。

[情報元]D Young & Co Trademark Newsletter No.115 March 2021
[担当]深見特許事務所 原 智典