既知の方法を用いて既知の問題を解決するクレームは自明である
Uber Techs., Inc. v. X One, Inc., Case No. 19-1164 (Fed. Cir. May 5, 2020)
X One社は、モバイルデバイス間で位置情報を交換する特許(米国特許第8,798,593号)を所有しています。この特許では、ユーザは、他のモバイルデバイスのユーザを”Buddy List”に追加し、自己の位置をリストの仲間と共有し、仲間の位置を地図で見ることができます。
X One 社は、Uber社が、この特許を侵害しているとして提訴しました。
Uber社は、X One社の特許がOkuboとKonishiとの組合せに基づき自明であるとして、当事者系レビュー(IPR)の請願書を提出しました。
特許審判部(PTAB)は、「プロットされた場所を含む地図を最初の個人に・・・送信する」というソフトウェアに関するクレームの限定は、これらの文献によって自明とはならないと決定しました
PTABは、Okuboには、位置が端末によって地図上にプロットされる「端末側プロットが開示され、Konishiには、X One社のクレームのように位置がサーバによって地図上にプロットされる「サーバ側プロット」が開示されていると判断しました。PTABは、OkuboのシステムをKonishiの「サーバ側プロット」と組合せることは、「Okuboの大規模な変更」になるとして、許されない後知恵であると判示しました。
Uber社は、PTABの上記決定を不服としてCAFCに上訴しました。Uber社は、「サーバ側プロット」と「端末側プロット」とは、公知の設計事項であり、互いに置き替えることは自明であると主張し、PTABの決定は、最高裁判決(KSR International v. Telefex)に従って法を適用していないと主張しました。
連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は、Okubo, Konishi, X One社の特許のすべては、「あるユーザが、他のユーザの位置を見て、追跡する」という同一の問題を解決することを試みており、この問題を解決するための方法は、「サーバ側プロット」と「端末側プロット」の2つの方法しかないと説示しました。CAFCは、「サーバ側プロット」と「端末側プロット」とは、「有限個の予測可能な解決策」であり、いずれの方法を選択するかは、設計上の選択肢であると述べました。CAFCは、OkuboのシステムをKonishiの「サーバ側プロット」と組合せることは自明であると判示し、PTABの決定を覆し、事件をPTABに差し戻しました。
[情報元]McDermott Will & Emery IP Update – May 14, 2020
[担当]深見特許事務所 西川 信行