EUIPOによるRCDの10年の統計(2010-2019)
欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、「EUIPO Design Focus – 2010 to 2019 Evolution」をリリースしました。このレポートでは、登録共同体意匠(RCD)に関連する成功事例に焦点を当て、直接出願のRCDの主要な数値と傾向が示されており、過去10年間で世界中の企業にとってのRCDの重要性が高まっていることが強調されています。
・出願件数と国
2010年から2019年の間に、988,000件を超える個別の意匠出願がありました。2020年の予測では、2010年から2020年の期間における意匠出願の総数は110万件となるとされています。直接出願のRCD出願の約72%は、ドイツを第1位とするEU加盟国からのものです。EU以外の上位3ヶ国は米国、中国、日本であり、これらはEU以外の国の直接出願のおよそ3分の2を占めます。2010年以降、中国のシェアは約12%増加し、出願件数は2010年と比較して890%以上増加しています。
・直接出願の出願人
上位10位の直接出願の出願人は、衣類、履物、衣料品、アクセサリー、家電製品、照明器具などのデザイン重視型の産業および商業の分野の事業者であり、直接出願全体の5.9%を占めています。上位5位は、Rieker Schuh、Nike、Robert Bosch、Pierre Balmain、及びSamsung Electronicsです。
・直接出願の分類
2010年から2019年の直接出願では、900,000件以上がロカルノ分類に分類され、第6類(室内品)がトップであり、その次は第2類(衣料品及び裁縫用小物)となっています。第6類及び第2類はどちらも90,000件以上出願されています。この後には第14類(記録、通信又は情報検索の機器)が続きます。
・出願審査:平均登録率および拒絶率
直接出願の平均登録率は95%以上でした。平均拒絶率は22%以上ですが、その大部分が修正されました。
・出願審査:拒絶
拒絶査定された事件については、ほとんど不服申立されず、審判部への審判請求率は拒絶事件の1%未満でした。
・登録:タイムライン
EUIPOはタイムラインを66%以上改善し、出願後そのまま登録されたRCDの出願から登録までの平均時間は2010年の12営業日から2019年の4営業日に短縮されました。
・登録:RCD所有者
RCD所有者の上位のほとんどが、出願人の上位10位と同じです。登録全体の5%以上を占める上位10社のうち、EUに拠点を置く企業は40%以上を占めています。スイスを拠点とする企業のRieker Schuhを含めると、ヨーロッパのシェアは60%を超えます。さらに、一部の所有者についてはRCD登録件数の大幅な増加が見られました。たとえば、2010年から2019年の間にAppleの登録は900%以上増加し、同じ期間にPhilipsは400%以上増加しました。
・登録の公開
2010年から2019年の間に、RCD出願10件中約9件が直ちに公開されました。つまり、公開は延期されませんでした。
・無効
2010年と2019年の間に3,700件を超える無効審判請求が行われ、年間増加率は20%を超えました。審判の主な言語は英語(平均60%以上)であり、ドイツ語(平均18%以上)がそれに続きます。無効審判の85%以上は、新規性の欠如と対象意匠の個々の特徴を請求の根拠としていました。無効審判請求のうち平均65%以上が認容され、無効の決定のうち毎年約36%について不服申立されています。
・RCDの更新
平均して、50%以上のRCDが最初の5年で更新され、またその約60%は、10年後も更に更新されています。
・存続中のRCD
2020年1月1日の時点で、800,000件を超えるRCDが存続しています。
[情報元]D Young & Co Newsletter No.110 |May, 2020
[担当]深見特許事務所 藤川 順