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(英国)保護原産地呼称を想起させるとして登録が拒絶された事例

 英国知的財産庁(UKIPO)は、「NOSECCO」という語を含み、第32類の「ノンアルコールワイン,ノンアルコールスパークリングワイン」を指定した下記の商標について、ワインの保護原産地呼称(PDO)である「PROSECCO」を想起させるものであると判断し、国際登録の英国指定を拒絶しました。

 本件は、「PROSECCO」の保護原産地呼称を管理する”Italian Trade Consortium”によって異議申立がなされました。「PROSECCO」は特定の要件を満たすワインにのみ使用することができ、また、ガラス瓶で販売され、厳格なラベル表示が義務付けられています。
 当該異議申立は英国商標法第3条(4)及び欧州議会及び理事会の規則1308/2013の第103条(2)項(b)に基づくものであり、保護原産地呼称は「あらゆる誤用、模倣、喚起」から保護されなければならないと規定されています。第103条(2)項(b)については、出所混同のおそれは要件ではなく、消費者に保護原産地呼称の製品のイメージを想起させることで足りるとされています。
 保護原産地呼称の製品と指定商品が類似していれば想起の可能性は高くなります。この点、ノンアルコールのワインと普通のワインは非常に類似すると判断されました。また、標章についても、視覚及び聴覚上の共通性から、上記ラベルは「PROSECCO」を想起させると判断されました。これにより、当該異議申立は第3条(4)項に基づいて認められ、上記英国指定は拒絶されました。
 本決定は、保護原産地呼称に与えられた保護の広さを示すものです。また、保護原産地呼称は、出所混同のおそれに比べるとハードルの低い、想起の要件の利益を享受できるものといえます。

[情報元]D YOUNG & CO TRADEMARK NEWSLETTER No.109
[担当]深見特許事務所 原 智典