(英国)英国のEU離脱(Brexit)による特許への影響
英国は2020年1月31日にEUを離脱しました。2020年12月31日に移行期間が終了し、「特許規則2019」が発効します。この規則により、特許および補充的保護証明書(SPC)に関するEU法の大部分が、英国においてそのまま残ることになります。
欧州特許条約はEUとは別の枠組みであるため、Brexit後も英国は依然として同条約の締約国であり続けます。英国内で特許権を取得するには、英国知的財産庁に直接出願するルートの他、欧州特許を英国に国内移行するルートを利用可能です。英国内の欧州特許弁理士は、欧州特許庁に対しての代理権を引続き有します。
”SPC manufacturing waiver”すなわちSPCの保護対象である医薬のEU域外への輸出のための製造、および存続期間6月前の保管を適用除外とする規則は、移行期間後に適正に機能させるための修正を経て、英国法として成立すると考えられています。
小児用医薬についてのSPCの延長申請に関し、2021年1月1日以後の申請については、英国での認可があればよいことになります。一方、既に申請済みの場合には、既存の要件がそのまま適用され、延長が認められるためには欧州経済領域の全域に亘る認可が必要とされます。
統一特許裁判所および単一特許に関し、欧州議会が、2019年11月5日にin-depth analysisを発行しています。このanalysisでは、「EU加盟国でなくとも英国が統一特許裁判所協定に留まることは、法的には不可能ではないと考えられる」と結論付けられています。現時点で、ドイツでは憲法裁判所への訴えのため統一特許裁判所協定が批准されていない状況ですが、ドイツで批准後に英国が引続き統一特許裁判所および単一特許に留まるのかどうかは、今後の英国-EU間の交渉次第であると考えられ、今しばらく情勢を見守る必要がありそうです。
[情報元]D Young & Co. Patent Newsletter no. 74、
英国政府ウェブサイト、欧州議会ウェブサイト
[担当]深見特許事務所 村野 淳