不正の目的をもって登録された模倣商標に関する韓国大法院の判例
韓国大法院は2019年8月14日付で宣告した2017Hu752判決において、韓国の自動車用品の生産メーカーである「株式会社ブルスワン(BULLSONE)」(以下、ブルスワンといいます)の登録商標は、世界的に有名なエナジードリンクメーカーである「レッドブルアーゲー(Red Bull AG)」(以下、レッドブルといいます)の先使用標章を模倣し、不当な営業上利益を得るために出願されたものと判断しました。
ブルスワンの登録商標 | レッドブルの先使用標章 |
指定商品及び役務: |
使用商品及び役務: |
レッドブルは、ブルスワンの登録商標が、レッドブルの先使用標章の信用や顧客吸引力などに便乗する不正の目的をもって出願されたものであると主張し、旧商標法第7条第1項第12号による無効審判を請求しました。
しかし、特許審判院は、両標章は類似するものではないと判断し、レッドブルの無効審判請求を棄却しました。
次いで、特許法院では、両標章の類似性は認められたものの、先使用標章が周知性を獲得した商品「エナジードリンク」とブルスワン登録商標の指定商品「自動車用洗浄剤」などは密接な経済的関係があると認め難く、また、先使用標章が「レーシング用自動車、レーシング用の衣類」などに使用されたとはいえ、単なる「エナジードリンク」の広告として使用されたものであるので、「自動車レーシングの相談運営及び関連スポーツイベント提供業」に係る外国の需要者に特定の役務の出所として認識されたものとは見受けられない、と判断されました。したがって、ブルスワンの登録商標は不正の目的が認められないとされ、特許法院はレッドブルが提起した審決取消訴訟に対して棄却判決を下しました。
しかしながら、韓国大法院では、レッドブル標章の「自動車レーシングの相談運営及び関連スポーツイベント提供業」についての外国における周知性を認定した上で、ブルスワンの登録商標は、創作性が高いレッドブルの先使用標章と非常に類似し、同商標はレッドブルレーシングチームが韓国で初めて開かれたF1大会に参加した後に考案されたものであることから、ブルスワンはレッドブルの先使用標章を模倣し、不当な利益を得るために商標登録出願をしたものとみなすべきであると判断し、これと異なる判断をした原審を破棄して差し戻しました。
[情報元]FirstLaw IP News 2019年12月
[担当]深見特許事務所 原 智典