台湾意匠の優先権の認定に関する新措置
台湾知的財産局は意匠登録出願で主張された優先権について、それが一つ又は複数の優先権、或いは部分の優先権であるかを問わず、本措置施行後は、出願日又は公開日が、優先日と後願の出願日の間にある出願又は関連資料が、審査段階での検索で発見された場合に限り、優先権証明書類により、その優先権主張を認めるか否かを判断することとし、発見されなかった場合には、出願人が主張した優先権全てを専利公報に掲載します。この新措置は2019年8月1日発行の専利公報より施行します。
また、知的財産局は、専利審査基準において、意匠登録出願は単一の意匠権の範囲しか含むことができないことを規定し、前記新措置の規定も加える改正を行うとしました。後願に開示された単一の意匠が2件又は2件以上の外国出願に開示された意匠の内容を組合せたものである場合、又は後願に開示された単一の意匠が、外国出願に開示された意匠内容の部分の意匠内容である場合、「同一の意匠」に該当しないと判断し、優先権を主張することができません。これについて、知的財産局は次の事例で説明しています:
事例1「ケース」と「ベルト」を含む「腕時計」を意匠登録出願する場合。即ち2つの組合せ。
1A.「ケース」と「ベルト」の2つの優先権を主張する
1B.「ケース」のみ優先権を主張し、「ベルト」の優先権は主張しない
事例2「プレイヤー」と「スピーカー」を含む「音響セット」を意匠登録出願する場合。
2A.「プレイヤー」と「スピーカー」の2つの優先権を主張する
2B.「プレイヤー」のみ優先権を主張し、「スピーカー」の優先権は主張しない
前記事例1、2に関して、意匠登録出願が2件の外国出願に開示された意匠内容を組合せたものである場合、又は意匠登録出願に開示された意匠が外国出願に開示された部分の意匠の内容である場合いずれにおいても、「同一の意匠」には該当せず、当該優先権の主張を認めることができません。
台湾意匠登録出願は自動審査制度を採用しており、出願人から出願に必要な書類が全て提出されると、審査官は意匠要件の実体審査を開始します。専利法の規定によると、意匠登録出願は一意匠ごとに出願しなければなりません。意匠登録出願は、基本的に一意匠一出願でなければならないため、知的財産局はこれまで一出願につき1件の優先権主張に制限していました。しかし、実務上、出願人は複数の優先権を主張することがあり、業界からも多くの反応があったため、知的財産局はアメリカ、日本などが先に優先権の認否について実質的な判断をしてないことを参考として、意匠も発明特許の方法と同様に、実体審査前に出願の優先権数の記載を制限しないこととしました。優先権主張の認可については、優先日から出願日までの先行技術が審査段階での検索で発見された場合に、優先権の内容と当該出願とが「同一の意匠」の規定に違反するか否かを実質的に判断します。一方で、出願された意匠が実質的に2以上の意匠である場合、出願人は審査官からの通知により又は再審査査定前に分割出願をし、別々の出願としてそれぞれ優先権を主張することができます。
[情報元]Union Patent Service Center Taiwan Newsletter, August 29, 2019
[担当]深見特許事務所 杉本 さち子