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明細書に記載された「本願発明」がクレーム範囲を制限

 CAFCは、明細書における「本願発明」の記載の使用が特許クレームの範囲を制限したと認める一方、地裁の判断を一部破棄し、非自明性および非侵害性を再考するように地裁に事件を差し戻しました。Forest Laboratories, LLC v. Sigmapharm Laboratories, LLC, Case Nos. 17-2369他 (Fed. Cir. March 14, 2019)
 Forestは、舌下に投与されるアセナピンを含む非定型抗精神病薬に向けられた特許を所有しています。Forestは、抗精神病薬Saphrisのジェネリック品がForestの特許を侵害したとして、いくつかの製薬会社を訴えました。非陪審審理の後に地裁は、被告は対象クレームが無効であることを立証できておらず、Forestは被告が特定のクレームを侵害していることを立証できていないと判示しました。被告は地裁の無効判断に関して上訴し、Forestは地裁の非侵害判断に関して上訴しました。
 CAFCは、地裁が、クレーム自体にいかなる明示の記載がないにもかかわらず、クレームを「頬内および舌下での処方」に限定していると述べています。これに関し、CAFCは、明細書には「本願発明」の特徴が舌下または頬内の医薬組成に関係していると記載されており、これが地裁の判断を強力にサポートしていると述べています。また、CAFCは、特許の名称が「舌下または頬内の医薬組成」となっており、明細書には先行技術に対する舌下および頬内での治療の利点が記載されているため、クレームを「頬内および舌下での処方」に限定することを更にサポートしていると述べています。
 なお、本件は無効判断および侵害判断に関してさらに検討するため、地裁に差し戻されました。
 (実務メモ)
 上記の事件は、CAFCがクレーム解釈において明細書からクレームに限定事項を導入する際、通常の制限から外れることは十分あり得ることを示しています。裁判所は、明細書における「本願発明は全体として」等の記載が、特に先行技術との対比に用いられたときには、発明の範囲を制限する効果を有することがあると強調しています。したがって、実務者は、明細書において、特定の実施例ではなく発明全体に適用可能なように見えることを記載する際には注意すべきです。

[情報元]McDermott Will & Emery IP Update Vol. 22, No. 4
[担当]深見特許事務所 紫藤 則和