特許適格性のための“特定の”治療
CAFCは、このほど治療方法クレームの特許適格性に関し、2つの判決を下しました(Natural Alternatives Int’l, Inc. v. Creative Compounds, LLC, Case Nos. 18-1295, (Fed. Cir. Mar. 15, 2019); Endo Pharmaceuticals Inc. v. Teva Pharmaceuticals USA, Inc., Case Nos. 17-1240, -1455, -1887, (Fed. Cir. Mar. 28, 2019;)。
I. Natural Alternatives Int’l, Inc. v. Creative Compounds, LLC.
Natural Alternatives(以下、「NA」と記載します)は、筋肉等の組織における無酸素運動の能力向上に用いる「ダイエタリー・サプリメント」に関する特許権を所有していました。NAが、Creative Compounds(以下、「CC」と記載します)に対し、本特許権に基づく侵害訴訟を提起したところ、CCは地裁において、本件特許がβアラニンやその他の天然物を、所定量摂取するという自然法則を構成要件とするから特許法101条の特許適格性に違反する旨を主張し、これが認められました。
しかしながら控訴審はNAの主張を認めました。すなわちCAFCは、「βアラニンは自然に存在し、一部の食事にも含まれるようであるが、本件特許の方法クレームは、患者の体質を変える程度に不自然な用量で天然物を用いること、および個々に応じて用量を変えることを要件としている」旨を認定し、特許適格性を認めました。CAFCは、方法のクレームに関する特許適格性の要件として「対象物に変化をもたらす特定の工程を要し、対象物の性質を変えることを要する」としました。
II. Endo Pharmaceuticals Inc. v. Teva Pharmaceuticals USA, Inc.
Endo Pharmaceuticals(以下、「EP」と記載します)は、オピオイド系鎮痛薬であるオキシモルフィンを用いた腎臓機能を損傷した患者に対する「疼痛治療方法」に関する特許権を所有していました。EPが、Teva Pharmaceuticals USA(以下、「TP」と記載します)に対し、本特許権に基づく侵害訴訟を提起したところ、TPは地裁において、本件特許が腎臓機能を損傷した患者にオキシモルフィンを投与した場合に起こる自然法則(反応)を構成要件とするから、特許法101条の特許適格性に違反する旨を主張し、これが認められました。
しかしながら控訴審はEPの主張を認めました。すなわちCAFCは、「本件特許の方法クレームは、腎臓機能を損傷した患者という特定の対象物に対し、特定の化合物を特定の用量で治療する方法を要件とし、かつ特定の結果を得るものである」旨を認定し、特許適格性を認めました。加えてCAFCは、「本件特許の方法クレームは、オキシモルフィンの量を調整し、または低用量化する特定の工程を含んでいる」としました。
[情報元]McDermott Will & Emery IP Update Vol. 22, No. 4
[担当]深見特許事務所 田村 拓也