中華人民共和国技術輸出入管理条例の改正
2019年3月18日、中国国務院は「国務院が一部の行政法規を改正することに関する決定」を公布し、49件の行政法規の部分条項が改正されたことを発表した。そのうち、「中華人民共和国技術輸出入管理条例」(以下「技術輸出入管理条例」という)に対し、以下のような実質的な改正が行われた。
第24条3項、すなわち、「技術輸入契約の譲受人が契約に従って譲渡人が提供した技術を使用した結果、他人の合法的権益を侵害する場合、その責任は譲渡人が負う。」を削除した。
第27条、すなわち、「技術輸入契約の有効期間内に、改良した技術は改良した側に帰属する。」を削除した。
第29条、すなわち、「技術輸入契約には以下に掲げる制限的条項を含めてはならない。譲受人に技術輸入に必須ではない付帯条件を求めること。必須ではない技術、原材料、製品、設備又はサービスの購入を含む。譲受人に特許権の有効期間が満了し又は特許権が無効宣告された技術について許諾使用料の支払い又は関連義務の履行を求めること。譲受人が譲渡人に提供された技術を改良し、又は改良した技術の使用を制限すること。譲受人にその他の供給先から譲渡人が提供した技術に類似し又は競合する技術の取得を制限すること。譲受人に原材料、部品、製品又は設備の購入ルート又は供給先を不合理に制限すること。譲受人に製品の生産高、品種又は販売価格を不合理に制限すること。譲受人に輸入した技術を駆使し、生産した製品の輸出ルートを不合理に制限すること。」を削除した。
コメント:
今回の改正によって、これまで議論されていた「技術輸出入管理条例」における第三者の権利を侵害した場合の責任負担、改良技術の帰属及び制限的条項などの強制的な規定は効力を失った。今後、技術輸入契約も、「契約法」第353条の規定に基づき、当事者は、譲渡又は許諾した技術が第三者の権利を侵害したときの侵害責任負担について約定することができ、約定がない場合、譲渡人が責任を負う。
改良技術の帰属については、「契約法」第354条の規定によれば、改良技術の帰属と分配については、互恵の原則に基づいて約定することができ、約定がないまたは約定が明確でない場合、改良技術は、改良した側に帰属する。従って、「技術輸出入管理条例」では、改良技術を改良した側に強制的に帰属するという条文が削除され、当事者は改良技術の帰属と分配について約定することができるようになったが、約定は互恵の原則に従わなければならない。
「技術輸出入管理条例」第29条の削除は、今後の技術輸入契約において当該条文に定めた制限的条項に関わる内容を任意に規定できることを意味するわけではない。理由としては、「契約法」第329条には、「技術の不法な独占、技術進歩への妨害」に該当する技術契約は無効であると明確に規定されている。「最高裁判所による技術契約紛争事件の審理の法律適用における若干の問題に関する解釈」第10条には、「技術の不法な独占、技術進歩への妨害」に該当する場合が挙げられている。その範囲は実質上、「技術輸出入管理条例」第29条の制限的条項をカバーしている。
[情報元]北京林達劉知識産権代理事務所 LindaからのIPニュース(速報201905)
[担当]深見特許事務所 小田 晃寛