Polo商標に対する無効請求棄却審決について
欧州連合知的財産庁(EUIPO)審判部は、Ralph LaurenのPoloロゴに対してStyle & Taste’sが提出した無効請求にはその主張を裏付ける十分な証拠が含まれていないと判断しました。
【背景】
Polo / Laurenは、2005年に以下のロゴを登録しました。
2016年、Style & Tasteは欧州連合商標(EUTM)の無効宣言の請求を提出しました。上記のポロマークが、当社のスペインの意匠権(下記参照)に依拠していたと主張しました。
2018年5月、EUIPOの無効・取消部は、以下の理由により、請求を全面的に棄却しました。
1. Style & Tasteは、スペインの意匠権の登録証明書の翻訳を提供できていないため、当該権利の保護の有効性と範囲を証明していない。
2. 国内法のみを参照しつつ、それに基づく証拠を提供していないのであれば、十分とはいえない。
3. Style & Tasteは、関連する有効な国内法を提出することも、EUTMの使用を防止する理由を述べる論理的な議論を提出することもできていない。
当該決定は、2018年7月にEUIPO審判部に上訴(審判請求)されました。
【審判部の決定】
審判部は、先行する権利としての意匠権に依拠する可能性を認める欧州連合商標規則(EUTMR)2017/1001の第60条(2)(d)を参照した。しかしながら、決定時に存在する権利しか考慮に入れられないとしました。Style & Tasteが利用した唯一の権利は、2017年5月に失効したスペインの意匠権でした。
Style & Tasteは、その先行意匠権の更新申請の写しを提供しておらず、またその権利のステータスに関する議論を提出していません。その結果、審判部は、無効宣言の請求の根拠となった唯一の先行権利は、その更新がないために有効ではなくなったと結論付けました。
したがって、EUTMR第60条(2)(d)の意義の範囲内で先行権利が存在しなかったため、無効宣言の請求は根拠がなく、棄却されました。
したがって、審判部は、請求人がEUTMR第60条(2)(d)によって定められた無効の要件を満たすことができたかどうかを決定する必要はありませんでした。その審判請求は棄却されました。
【要約】
この決定は、(最近のBIG MACの決定に続く)最新の事例であり、ある請求の提起又は抗弁する際に、使用又は登録の十分な証拠を提供することの重要性を示しています。
先行する権利が消滅し、請求が適切に裏付けられていない場合、その請求は遅かれ早かれ失敗することとなります。
[情報元]D YOUNG & CO TRADEMARK NEWSLETTER no.103
[担当]深見特許事務所 原 智典