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(インドネシア)旧法下での未払い年金を支払わなければ新規出願は拒否

 インドネシア知的財産総局(DGIP)が、最近、一部の特許所有者に対して、「未払い年金があり、かつ6ヶ月以内に未払い年金を支払わない場合には、新しい特許出願を受理しない」とする旨の公式通知の発行を開始しました。
 旧インドネシア特許法(2016年8月25日まで有効)では、年金は支払期限日から3年間は支払いが可能とされていました。3年間連続して年金の支払いが行われなかった場合には特許は無効とされましたが、与えられた特許保護の技術的利益をその期間中も享受したという観点から、特許所有者はその3年間に累積した未払い年金を支払う義務がありました(ポスト・プロテクションシステム)。この未払い年金はDGIPへの債務であるとみなされていました。なお、新法(2016年8月26日施行)下では、「プリ・プロテクションシステム」が適用され、期限日までに年金の支払いがなかった際には特許が無効となり、未払い年金が発生しないシステムとなっています。
 以前の慣行を不当と感じたことを理由に、多数の特許所有者が未払い年金の支払いを行わなかったと考えられています。また、未払い年金の支払いに関する公的なシステムが確立されるまでは「様子見」の姿勢を取っていた特許所有者も多数いたと思われます。
 旧インドネシア特許法が有効であった頃は、DGIPは特許所有者に未払い年金の支払いを積極的に請求していましたが、新法が施行されて以来、あまり積極的に請求は行われていない模様でした。しかし、今になり、未払い年金の支払いが完了するまで新規の出願を受理しないという声明を伴う上記の公式通知を発行することにより、DGIPは支払い請求に顕著に注力するようになりました。
 現時点では、未払い年金のある特許所有者からの新規特許出願を拒否することに関する公式な規定は存在していません。一方、未払い年金のある特許所有者からの新規特許出願への拒否が有効になるのは、2019年2月からと考えられていましたが、2019年2月にDGIPが発行したOfficial Circularで未払い年金の納付期限を2019年8月17日まで延長することが発表されました。
 出願人の未払い年金の有無に基づいて新規出願の可否の選別が開始されると、多くの問題が発生することが予想されます。最も顕著な問題は、出願人が全ての未払い年金を支払ったにも関わらず、DGIPが意図せず記録の更新を行わなかったため、新規出願が拒否されてしまう可能性です。また、出願人に未払い年金を支払う意思があるにもかかわらず、新規特許出願の拒否に関する公式通知を受け取らなかったために、未払い年金があることに気づかないまま新規出願を行ってしまい、新規出願が拒否されてしまう可能性も存在します。もし出願人がその出願が拒否された旨の通知を、出願期限が経過した後に受け取る事態となってしまえば、大きな問題になるのは明白です。DGIPがこの問題に関するガイダンスを早期に提供してくれることが期待されます。

[情報元]Spruson & Ferguson, November 13, 2018、DGIP HP
[担当]深見特許事務所 和田 吉樹