(欧州)医薬品に関する補充的保護証明書の有効期間に関する欧州連合司法裁判所の予備的判決
特許権による医薬品の実質的な保護期間は、当局による販売承認の審査のため、実質的に短くなります。これを補償するため、欧州規則469/2009(以下「SPC規則」と称します。)において、特許権により保護され、かつ、当局による販売承認を得た製品について、特許権の保護期間の満了後、所定の期間にわたって、特許権と同様の保護を与える補充的保護証明書(SPC)が規定されております。
SPCの期間につき、SPC規則13条1項は、SPCは、(i)基本特許の法的期間の満了日に発効し、(ii)その有効期間は、基本特許の出願日からEU市場における販売についての最初の当局の承認日までの経過期間から、5年の期間を差し引いた期間である旨が規定されております。また、同条第2項には、第1項の規定にかかわらず、SPCの有効期間は、SPCの発効日から5年を越えない旨規定されております。
SPC規則13条1項における「EU市場における販売についての最初の当局の承認日」が、(a)当局が販売承認した日、(b)当局による販売承認の決定が申請人に通知された日、(c)当局による販売承認の通知がEU官報(EU Official Journal)に公告された日、のいずれを意味するかについて、EU加盟国間で解釈が分かれていました。
オーストリアのウィーン高等裁判所の付託を受けた欧州連合司法裁判所(CJEU)は、2015年10月6日、SPC規則13条1項における、「EU市場における販売についての最初の当局の承認日」は、(b)当局による販売承認の決定が申請人に通知された日を意味する、との予備的判決を下しました(事件番号:C-471/14)。この判決により、今まで上記(a)の解釈を採用していたEU加盟国(例えば、オーストリア)では、SPCの有効期間が数日間延び、今まで上記(c)の解釈を採用していたEU加盟国(例えば、英国)において、SPCの有効期間が数日間短くなります。
[情報元]D Young & Co, Patent Newsletter, No. 49, October 2015、 JETROデュッセルドルフHP、欧州連合司法裁判所(EUCJ)HP
[担当]深見特許事務所 日夏 貴史