(ドイツ)数学的方法の特許性
ドイツ連邦最高裁は、Flugzeugzustand事件において、ドイツ特許法第1条(3)および(4)の下において、数学的方法に対するクレームを許可するように、コンピュータプログラムの特許性に対する既存の法理を拡大解釈しました。
ドイツ特許法第1条(3)は、同法第1条(1)の発明から除外される対象としてコンピュータ・プログラム(および数学的方法)が含まれることを規定しています。ただし、ドイツ特許法第1条(4)では、前記の対象それ自体について保護が求められる場合に限り,特許性が阻害されると規定されています。
今回、ドイツ連邦最高裁(以下「最高裁」)は、技術的方法が用いられていれば、ドイツ特許法第1条(1)の意味の範囲内において、技術的分野の発明であるという既存の法理を支持しました。最高裁は、ドイツ特許法第1条(3)1の意味の範囲内において、コンピュータ・プログラムに関する同じ基準が数学的方法に適用される、すなわち、クレームされた教示が具体的な技術的方法によって具体的な技術的課題を解決しているのであれば、特許性は阻害されないと判示しました。また、クレームされた方法(航空機の状態の判断方法)は、技術的パラメータを示す測定値評価によって航空機の状態を判断するために用いられているのであるから、当該基準を満たしているとの見解も示しています。
さらに、最高裁は、除外対象の主題は、進歩性を評価する際には考慮されるべきではないという法理にも言及しており、この法理は、ドイツ特許法第1条(3)1に従って除外対象となっている数学的方法にも適用されるとの見解を示しています。しかし、自然法則は、通常、数学的に定義されているのであるから、数学的方法が、自然力とともに用いられているのであれば必ずしも非技術的であるとは言えないとも述べています。
最高裁の判決要旨は、次のようになります。
a)数学的方法は、技術的方法によって具体的な技術的課題の解決に貢献している場合にのみ、特許を受けることができる。
b)数学的方法は、クレームされた教示の文脈において、それが自然力の利用に関するものでない場合に限り、非技術的であるとみなされる。
c)航空機の事例においては、数学的方法が、利用可能な測定結果を用いて航空機の状態についての信頼性の高い情報を取得し、それによってシステムの動作に影響を及ぼしている場合に、自然力の利用に対する関連性が認められる。
d)単に、先行技術に対して明確な利点がないというだけで、進歩性を有する対象が特許性がないとみなされることはない。
[情報元]Jenkins Patent Issues, Autumn 2015
[担当]深見特許事務所 勝本 一誠