韓国特許法院の「特許等の審決取消訴訟の審理マニュアル」について
韓国の特許法院は、「特許等の審決取消訴訟の審理マニュアル」(以下、「審理マニュアル」という)を設け、2016年9月1日より実施します。審理マニュアル制定の趣旨は、特許法院がこれまで蓄積してきた審理ノウハウに基づいて、適した審理モデルを提示することにより、当事者の訴訟準備の便宜性と手続に関する予測性を高め、裁判進行の効率性と紛争解決の迅速性を増進することにあります。
以下に、審理マニュアルの主要な内容について簡略に紹介します。
(1)訴訟手続の段階別の進行内容を具体的に提示しました。
当事者や代理人が、訴訟手続がどのように進行されるか、進行段階別に自分が用意すべきものは何であるか、について容易に把握することができ、効率的な訴訟の準備ができると期待されます。
(2)訴状・答弁書・準備書面等の必須記載事項と証拠申立手続等を詳しく規定しました。
当事者の充実した訴訟準備の誘導及び裁判部の適正な事件分類、並びに審理計画の樹立のためです。
したがって、裁判部が当該事件に適した審理計画を樹立することができるように、当事者や代理人が証拠申出の計画等の訴訟進行の全般に関する意見をできるだけ詳しく記載しなければならない点に留意すべきです。
(3)主張の提出及び証拠申出をすべき期限を定める裁定期間制度(民事訴訟法第147条)、弁論準備期日の終結による失権効制度(民事訴訟法第285条第1項)の活用を強調しました。
これは、紛争の迅速な解決のために必要な主張及び証拠が適時に提出され、集中審理が行なわれるようにするためです。
(4)争点別の集中審理手続を導入しました。
無駄な争点を減らす等の弁論の効率性を高めるための措置です。
(5)当事者の訴訟準備の便宜性を高めるために、事件の類型別に提出する基本的な証書や添付書類等を具体的に提示し、主張書面の書き方と内容を適切な例示の形態で提供しました。
例えば、拒絶審決に対する審決取消訴訟では、審決文、願書、意見提出通知書、補正書、意見書、拒絶決定書等を証書として提出するようにしました。無効審決に対する審決取消では、審決文、登録原簿、登録公報、先行発明(先行考案、先登録商標、先使用商標、先行意匠)に関する証拠を証書として提出するようにしました。
(6)遠距離に居住する当事者と訴訟代理人の便宜性を図るため、手続の協議等を画像会議の形で進行するようにしました。
当事者や代理人は、事務室や自宅等でビデオ通話プログラムである「スカイプ(skype)」に接続して事件管理のための画像会議に参加することができます。
なお、韓国の特許法院は、今後、進歩性の審理マニュアル、鑑定マニュアル、専門家参加マニュアル等を追加して設けて公開する予定とのことです。
[情報元]FIRSTLAW P.C., FirstLaw Bulletin, August 31, 2016
[担当]深見特許事務所 小寺 覚