中国知的財産権局が『専利審査指南修正案(意見募集稿)』を公表
中国知的財産権局は2016 年10 月28 日に『専利審査指南修正案(意見募集稿)』を公表しました。今回の修正は、ビジネスモデルとコンピュータプログラムの保護、補足実験データの提出及び無効審判におけるクレームの訂正などに関するものです。
(1)ビジネスモデルとコンピュータプログラムについて
近年来、インターネット技術は、爆発的に普及しかつ経済と社会の各分野と深く融合しており、各業界のビジネスモデルの革新を推進しています。このようなビジネスモデルの革新における技術案を特許制度により保護することが期待されています。「意見募集稿」において、「ビジネスモデルに関する請求項について、ビジネス規則及び方法の内容だけではなく、技術的特徴を更に含む場合には、特許法第25 条の規定に基づき特許取得の可能性を排除すべきでない」と規定されました(第二部分の第一章の第4.2 節)。即ち、知的活動の法則と方法に属することを理由として、ビジネスモデル革新における技術案の権利付与が否定されるべきではないことが明確にされました。
現行審査指南では、「コンピュータプログラムそのもの」は知的活動の規則と方法に属するものであり、特許権を受けることができませんが、コンピュータプログラムを実行する目的が技術的課題を解決することである場合、「コンピュータプログラムに関する発明特許出願」の解決案は、特許保護の客体に該当すると規定されています。「意見募集稿」において、「媒体+コンピュータプログラム工程」のクレームの作成が認められることが明確になりました。またコンピュータプログラムに関する装置クレームの構成部分にプログラムを含んでもよいことが明確になりました。
(2)化学分野で補足実験データの提出について
現行審査指南では、化学分野の発明の明細書が十分に開示されているかどうかを判断するにあたっては、「出願当初の明細書とクレームに記載の内容を基準として、出願日以降に補足提出された実験データを考慮しない」と規定されています。実務では、外国出願人により出願日以降に補足提出された実験データが考慮されずに拒絶されるケースがしばしば発生しています。
「意見募集稿」において、「出願日以降に補足提出された実験データに関し、審査官は審査しなければならない。補足実験データが証明する実験効果は、所属技術分野の技術者が特許出願公開の内容から得られるものでなければならない」と規定されました(増設した第二部分の第十章の第3.5 節)。即ち、出願日以降に補足提出された実験データが、所属技術分野の技術者が特許出願公開の内容から得られる技術効果を証明するものである場合、審査官は当該実験データを考慮しなければなりません。
(3)無効審判におけるクレームの訂正について
現行審査指南では、権利付与後の特許書類の訂正に対する制限が厳格であり、無効審判においてクレームの削除、合併及び技術案の削除という三つの方式のみに限られています。実務では、「クレームの合併」という補正方式を如何に定義するかについても議論されています。「意見募集稿」においては、特許書類の補正方式が適切に緩和され、「クレームの合併」が削除され、「明らかな誤りの補正」及び「クレームの更なる限定」が増設され、かつ「クレームの更なる限定とは、クレームにほかのクレームに記載の一つ又は複数の技術的特徴を補充し、保護範囲を減縮するものであり、かつ、クレームに記載の明らかな誤りの補正を認める」と規定されました(第四部分の第三章)。請求の範囲が公示性を有することを考慮し、明細書に記載されているけれども請求の範囲に記載されていない技術的特徴をクレームに追加することは未だ認められていません。
[情報元]中国専利代理(香港)有限公司 Newsletter 2016 Issue 5
[担当]深見特許事務所 小田 晃寛