英国のUPC 協定批准について
英国知的財産庁(UKIPO)は、2016 年11 月28 日、同庁のプレスリリースにおいて、統一特許裁判所(UPC:Unified Patent Court)協定への批准に向けた準備を継続する意向である旨を表明しました。
プレスリリースによれば、英国の知的財産担当大臣は、欧州連合(EU)の一員である限り英国が完全かつ積極的な役割を果たし続けていく旨、英国はEU との新たな協定の交渉に際して最適な取引条件を可能な限り求めていく旨、およびUPC 協定への批准を進めるという決定が、今後行なわれるEU との交渉における英国の目的や立場を先取りするものとみなされるべきではない旨について言及しています。
また、プレスリリースによると、英国は、今後数か月にわたって、UPC 準備委員会との作業を通じて、UPC 協定の批准に向けた準備を継続していく予定であるとされています。なお、UPC は、EU の組織ではなく、英国の判事も含まれる国際特許裁判所であることについても言及されています。
この表明は、英国がEU から離脱した後もUPC 協定への参加を継続することを期待させるものです。また、英国がUPC 協定に参加した場合のUPC の地理的範囲は、不参加である場合の地理的範囲よりも、統一特許を非常に魅力的にするでしょう。
英国がUPC 協定批准の意向を2016 年11 月に表明した後、UPC 準備委員会は、2017年1 月16 日、UPC の暫定適用段階(Provisional Application Phase)が2017 年春(5月)に開始し、UPC 協定が2017 年12 月から施行される予定であると表明しました。暫定適用段階の開始により、UPC の管理組織を含めた関連機関の設立等が進められ、裁判官等の面接や採用が行なわれる予定です。
このように、2017 年12 月にはUPC 協定の開始が現実のものとなると予想されますが、英国のEU 離脱後においても、英国が政治的および法的な観点からUPC 協定への参加を継続できるのかは不透明です。そのため、UPC 協定に英国が短期的に参加するのか、長期的に参加するのかという問題に対しては、注意を向け続けていく必要があると思います。
[情報元]英国知的財産庁HP、JETRO デュッセルドルフHP
JA Kemp News, November 28, 2016
[担当]深見特許事務所 勝本 一誠