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(ドイツ)特許のない領域で特許製品が製造された場合でも特許侵害を認める

 デュッセルドルフ高等裁判所は、特許のすべての特徴を有する製品が最終的に特許権を有さない領域でしか製造されなかった場合であっても、特許権を侵害すると判示しました(I-2 U 51/16 – Dampftrocknungsanlage)。
 本事例において、ドイツで提示された被告製品は、原告のドイツ特許の特徴をすべて満たすものではありませんでしたが、スウェーデンにおける被告装置は、ドイツ特許のすべての特徴を実現するものでした。そのため、原告は、このスウェーデンにおける装置がドイツ特許を侵害していると訴えました。
 デュッセルドルフ高等裁判所は、被告の行為によると、ドイツ特許法第9条1に基づく提供が存在すると認定しました。また、デュッセルドルフ高等裁判所は、本事例のように、ドイツからの提供後に特許のない外国において対象特許の特徴を実現する装置の引渡しまたは設置が行われる場合、その国内での提供は、一般的に特許に基づく主題に関連していたことを正当化するものであり、したがって、引渡しまたは設置のために国内から出された提供は、特許を侵害すると見做されるべきであるとの見解を示しました。さらに、デュッセルドルフ高等裁判所は、国内において提供が行われたという事実は、提供当事者の国内事業所により提出された最初の提供が特許の使用を導くすべての建設的な詳細を含んでいなかったという事情によって変更されるものではないと述べています。このことは、外国における行為が国内での提供対象の枠内にある限り、すなわち、外国での行為が提供対象を変更することなく、より詳細に示している場合に限り、適用されるとの見解も示しています。
 この判決によると、本発明の主題が特許のない外国で製造された場合であっても、国内における特許侵害を立証することができるかもしれません。ほとんどの場合、特許権者は提供に関する文書を把握していないということを鑑みると、最終製品から国内での提供行為という結論を導くことができるという見込みは、議論をより容易にするでしょう。しかしながら、これは、連邦裁判所によって未だ承認されていない解釈であることに留意する必要があります。

[情報元] Bockhorni & Kollegen UPDATE Ed. 1/2018
[担当]深見特許事務所 勝本 一誠