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IPRは合憲であるとの米国最高裁判決

 概要
 2018年4月24日、米国最高裁は、当事者系レビュー(IPR)は合憲であるとの2016年5月4日付のCAFCの判断を7対2で支持しました。

 背景
 Oil States社は、水圧破砕に用いられる坑口機材を保護するための装置および方法に向けられたクレームの特許を2001年に取得しました。その後、Oil States社は、Greene’s Energy社がOil States社の特許を侵害したとして訴訟を提起しました。これに対し、Greene’s Energy社は、当該特許が無効であるとして地裁に訴えるとともに、IPRを通じてUSPTOにも無効を申立てました。地裁の進行が停止されることはなく、両方の手続が平行して継続しました。
 IPRの開始を求める審判部への申立てにおいて、Greene’s Energy社は、Oil States社の特許クレームの2つは新規性がなく、先行技術に鑑みて無効であると主張しました。審判部は、Greene’s Energy社が2つのクレームに特許性がないことの合理的可能性を立証したと判断し、IPRを開始しました。
 IPRが進行している間に、地裁は、Oil States社に有利なクレーム解釈命令を発行しました。IPRの審判部は、それを認識していましたが、クレームには新規性がないと判断しました。Oil States社は、IPRの審判部の決定に対してCAFCに控訴し、特許性の議論に加えて、IPRの合憲性についても異議を申立てました。
 IPRの合憲性について、Oil States社は、合衆国憲法第3条に定める裁判所のみが特許を無効にする司法権を有すると議論しました。CAFCは、Oil States社の訴訟の係属中に、別の裁判での同じ違憲の主張を拒絶し、Oil States社の特許についてもIPRの審判部の決定を略式に支持しました。

 最高裁の判断
 Oil States社は、IPRの手続が憲法第3条および/または修正第7条に反しているかどうかを決定するためサーシオレイライにより最高裁に上訴しました。Oil States社の憲法上の議論は、特許権は行政的に取り除くことのできない私有財産権であって、憲法第3条に定める裁判所(地裁)によってのみ司法的に排除し得るという最高裁の判例に基づいています。多数派は、当該判例を当時有効だった過去の特許法令に限定すべきであると主張しました。一方、反対派は、過去の法令の論理は、現在の法令にも適用可能であり、IPRの法令は違憲であると主張しました。
 最高裁は、7対2で、特許の無効性を評価する際に地裁によって行われる手続とIPRでUSPTOによって行われる手続との間に類似性はあるものの、IPRは憲法第3条に反しないと結論付けました。さらに、最高裁は、次の(i)、(ii)の理由から、IPRは憲法修正第7条に反しないと結論付けました。
 (i) IPRおよび特許無効は、議会がUSPTOのような行政代理者に権限を適切に委譲している対象である。(ii) 修正第7条は、議会が今回のような憲法第3条の対象でない機関に決定の権限を適切に委譲する際、陪審員以外の事実認定者による決定に対して独立した障壁とはならない。

 結論
 上記の最高裁判決は、IPRとUSPTOに対して何の変更もないことを意味し、IPRは被疑侵害者が米国特許の有効性を争うための道として残ります。

[情報元]Greenblum & Bernstein, April 24, 2018
[担当]深見特許事務所 紫藤 則和