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物品の一部分に係る意匠権侵害の損害賠償請求

 部分意匠や登録意匠の利用といった物品の一部分に係る意匠権の侵害事件において損害賠償額をどのように算定すべきかについて、台湾知的財産裁判所は2016 年6 月21日付の104 年(西暦2015 年)度民専訴字第62 号民事判決において説示しています。
 原告はスーツケースの取っ手に係る意匠(中華民国意匠登録第D141942 号(以下、「登録意匠」といいます。))の意匠権者であるところ、登録意匠に類似する取っ手を有するスーツケースを販売する被告に対して、意匠権を侵害しているとして損害賠償請求をしました。
 損害賠償額をどのように決定するかについて、原告は、侵害被疑物は単独で販売されたわけではなく、スーツケースに取付けられて販売されたものであることから、被告がスーツケースを販売することで得た利益額をもって意匠権者が被った損害額として算定すべきであると主張しました。
 裁判所は、権利侵害被疑物が権利侵害部品と非侵害部品とを組合せたものである場合、(1)権利侵害部品と非侵害部品は通常共同で販売されており、(2)共同に作用して初めて意匠が達成しようとする効果を発揮することができ、(3)意匠権者は、当該専利部品は取引の相手方による当該製品の購買促進の主因となることを立証・証明済みである場合においてのみ、権利侵害者が製品全体(権利侵害部品と非侵害部品を含む)を販売て得た利益額を侵害者が侵害行為により取得した利益額とすることができる、と認定しました。本件においては(1)及び(2)の要件に合致するが、通常の取引状況によると、一般消費者は、スーツケースの、サイズ、本体の意匠、ボディの材質、内装、キャスターの意匠、色・模様、ロックシステム等を購買選択する際の重要な要素とするのであって、取っ手の意匠のみが購買の主因であるとはいえないため、「被告が販売したスーツケース」の全体の利益額をもって損害賠償額を算定することはできず、「侵害被疑物(すなわちスーツケースの取っ手)」の部分の利益額をもって単独で算定すべきであると判断しました。

[情報元]Lee and Li Bulletin – December 2016
[担当]深見特許事務所 藤川 順