(ドイツ)ドイツ連邦最高裁が実施の形態の一般化について判決を下す
ドイツ連邦最高裁は、特許権者の訴えによる「バルブユニット事件」(X ZB 1/16)の判決を下しました。
対象の特許(DE 10 2006 006 439 B1)は、ドイツ特許商標庁における異議申立で維持されましたが、連邦特許裁判所における控訴審で無効にされました。連邦特許裁判所の見解によれば、当該特許は、出願当初と比較して拡張されました。この見解が特許の取消に結びつきました。
しかしながら、連邦最高裁は、連邦特許裁判所とは違った方法で、許されざる拡張の問題を評価しました。興味深いことは、対応する欧州特許EP 1 986 874 B1 に対する異議申立における欧州特許庁の判断とは異なる評価基準を、連邦最高裁が明らかに適用したことです。欧州特許庁と異なり、連邦最高裁は、クレームの補正における、出願当初に開示された実施の形態の一般化を許容しました。これは、明示的に開示された特徴の組合せを完全にクレームの補正のために適用することは必要ないということです。むしろ、出願の一般的状況が許容するのであれば、開示された特徴の組合せのうちの必須の特徴を取出すことができます。これによると、ドイツ特許法において、「チェリー・ピッキング」が欧州特許庁よりも許容され得ます。
個々の事件との関連で特許出願の開示内容を裁判所が自由に評価することになるため、この連邦最高裁のアプローチは概して歓迎されています。出願書類の具体的な文言との厳密な関連付けはありません。したがって、短く理解容易な特許出願が可能です。一つの同一の技術内容について異なる文言を列挙することは、特許出願書類を困惑するほど長くさせます。ドイツにのみ特許出願する場合には、このような異なる文言の列挙は必要ありません。
結論として、連邦最高裁の本判決は、「チェリー・ピッキング」に対する欧州特許庁の限定されたアプローチと対照的であり、高く評価すべきです。無効訴訟の場合、欧州特許庁の限定されたアプローチよりもむしろ、ドイツ連邦最高裁のはるかに寛大な司法権を適用できるでしょう。
[情報元]Bockhorni & Kollegen UPDATE Ed. 1 / 2017
[担当]深見特許事務所 村野 淳