特許侵害訴訟にて米国企業が被告である場合の裁判地に関する限定法令を認めるとした最高裁判決
TC Heartland v. Kraft Foods Group Brands 事件において、米国最高裁は、特許裁判地制定法1400 条(b)に基づき、特許侵害訴訟において米国企業が被告である場合、どのような理由により適切な裁判地が決定されるべきであるかを審議しました。1400 条(b)には、「被告が居住する、もしくは被告が侵害行為をなし、通常確立された業務を行なっている場所がある裁判管轄区において、特許侵害民事訴訟を取扱ってよい」と記載されています。最高裁の全裁判官一致で、特許裁判地制定法においては、米国企業は法人組織化された州においてのみ「居住する」とされました。本判決は、CAFC のほぼ30 年間にわたる先例を覆したことになります。この先例では、特許裁判地に関して、被告企業が的管轄権の対象となるいずれの裁判管轄区においても、被告企業が居住するとみなされていました。このようなCAFC の解釈により、実際、被告が侵害販売をなしたいずれの場所においても、特許権者は提訴することが可能であるとされていました。しかし、今回の最高裁の判決では、米国企業が法人組織化された、もしくは米国企業が「侵害行為をなし、通常確立された業務を行なっている場所がある」州においてのみ、米国企業を特許侵害で提訴することができるとして、裁判地が限定されています。このため、テキサス州東部地区地方裁判所のように頻繁に特許権者にとって有利であるとみなされている裁判所において、特許権者が米国企業を自由に提訴することが従来に比べて困難となります。
しかし、最高裁は、外国企業提訴の際の裁判地の質問については、1972 年のBrunette Machine Works v. Kockum Industries 事件の判決に言及すること以外、意見を述べることを明確に拒否しました。この判決では、最高裁は、特許侵害でカナダ籍企業を提訴する際の裁判地は、特許裁判地制定法ではなく、(現在1391 条(c)(3)に成文化されている)1391 条(d)により定められるとしました。この法令では、いずれの裁判管轄区においても外国企業を提訴することができるとされています。
[情報元]Oliff Special Report, June 27, 2017
[担当]深見特許事務所 紫藤 則和