(ドイツ)ドイツ連邦最高裁が強制実施権の仮処分を承認
ドイツ連邦最高裁は、2017年7月11日、塩野義製薬株式会社(以下「塩野義製薬」)が取得していたHIV関連薬に関する欧州特許(EP1422218)について、強制実施権付与の仮処分を承認したことをウェブサイトで公表しました。
MSD(Merck Sharp & Dohme)株式会社および関連会社(以下「メルク社」)は、HIV感染の治療のための薬として、有効成分であるラルテグラビルを含むアイセントレスを販売していました。
2015年8月、塩野義製薬は、メルク社に対して、EP1422218に基づく特許侵害訴訟をデュッセルドルフ地方裁判所に提起しました。これに対して、メルク社は、2016年1月、特許法第24条第1項に基づき強制実施権付与を認めるよう申立を行ない、2016年6月、特許法第85条第1項に基づき当該強制実施権付与の仮処分申請を行ないました。
2016年8月、連邦特許裁判所は、当該仮処分申請を認める決定を下しました。そして、塩野義製薬は当該決定に対して不服申立を行ないましたが、2017年7月11日、ドイツ連邦最高裁は、連邦特許裁判所による当該仮処分を認める決定を支持しました。
ドイツ連邦最高裁は、合理的な取引条件下において発明の使用の承認を得ようとした裁判以前の申請人の努力は、特に異議申立の不確定な結果に基づいて十分であったという結論に至ったとの見解を示しています。
また、ドイツ連邦最高裁は、仮処分を承認した理由について、「HIVまたはAIDS患者の全てが、常にラルテグラビルで治療される必要はない。しかし、治療の安全性および品質を維持するためにラルテグラビルを必要としている患者グループが存在する。患者グループは、乳幼児、12歳未満の子供、妊婦、感染症の危険性のために予防的治療が必要な人、および、既にアイセントレスを用いた治療がなされており他の薬剤への切替により重大な副作用に脅かされる患者を含む。このような背景を鑑みて、さらなる流通に対する暫定的な許可についての公益を支持した」との見解も示しています。
[情報元]ドイツ連邦最高裁HP、JETRO デュッセルドルフHP
[担当]深見特許事務所 勝本 一誠