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中国特許法の第3次改正について

 さて、標記の件に関しまして、2009年10月1日より発効(施行)が予定されております中国特許法の第3次改正について、下記の如くご報告申し上げます。
1.改正の概要
改正の概要は、以下のとおりです。
(1) 中国で完成した発明等の外国への出願(新特許法20条1項、4項)
(2) 「相対的新規性」から「絶対的新規性」への移行(新特許法22条2項、5項)
(3) 遺伝資源保護(新特許法5条2項、新特許法26条5項)
(4) 共有特許(新特許法15条)
(5) 侵害訴訟における特許権者への制限
(a) 特許権侵害紛争における公知技術の抗弁(新特許法62条)
(b) 特許権侵害とみなされない状況-Bolar例外(新特許法69条(5))
(c) 並行輸入(新特許法69条(1))
(6) 不当に保護期間を延長する問題
(a) ダブルパテント(新特許法9条)
(b) 同一出願人による拡大先願(新特許法22条2項)
(7) 意匠に関する改正
(a) 意匠の保護客体に関する限定(新特許法25条(6))
(b) 権利付与の基準(新特許法23条)
(c) 意匠出願の簡略説明(新特許法27条、新特許法59条2項)
(8) 強制実施許諾の強化(新特許法48条、50条、52条、53条、54条、57条)
(9) 賠償の強化(新特許法65条)
(10) 渉外代理資格の廃止(新特許法19条)
ここに含まれる情報は一般的な参考情報であり、法的助言として使用されることを意図していません。従って、IP案件に関しては弁理士にご相談下さい。

 

2.各改正事項の詳細(新旧条文対照とコメント)
(1) 中国で完成した発明等の外国への出願(新特許法20条1項、4項)

改正前 改正後
第20 条第1 項 中国の単位又は個人が国内で完成した発明創造を外国に特許出願する場合は、先ず国務院特許行政部門に特許出願し、国務院特許行政部門が指定した特許代理組織に委託して処理し、かつ本法第4 条の規定を遵守しなければならない。 第20 条第1 項 如何なる単位又は個人も中国で完成した発明、実用新案を外国に特許出願する場合、事前に国務院特許行政部門による機密審査を経なければならない。機密審査についての手続、期限は国務院の規定に基づき行う。
  第4 項 本条第一項の規定に違反して、外国に特許出願した発明又は実用新案を中国で特許出願する場合、特許権を付与しない。

 

<コメント>
 旧特許法20条1項では、中国で完成した発明創造を外国に特許出願する場合、まず中国で特許出願しなければならない旨が規定されていました。
 新特許法20条1項における改正は主に以下の2点にあります。
 (i) 中国で完成した発明、実用新案について、先ず中国で特許出願しなければならないという強制的規定を取消し、その代わりに、出願人は、外国に特許出願する場合、中国で機密審査を受けるものと規定しています。この機密審査の目的は、国防又は重大な利益に関わる発明創造の流失を防止することにあります。
 (ii) 行為主体を「中国の単位又は個人」から「如何なる単位又は個人」に改正しました。
この目的は、多国籍企業が中国で完成した発明創造を直接に外国で特許出願することを防止することにあります。
新特許法20条4項は、新特許法20条1項の規定違反に対する罰則として新設されました。

(2) 「相対的新規性」から「絶対的新規性」への移行(新特許法22条2項、5項)

改正前 改正後
第22 条第2 項 新規性とは、出願日以前に同様の発明又は実用新案が国内外の出版物上で公開発表されたり、国内で公開使用されたことがなく、又はその他の方式で公衆の知るところとなっておらず、また同様の発明又は実用新案が他人により国務院特許行政部門に出願されたことがなく、かつ出願日以降に公開された特許出願文書の中に記載されていないことをいう。 第22 条第2 項 新規性とは、当該発明又は実用新案が従来の技術に属しておらず、同様の発明又は実用新案が出願日以前に如何なる単位又は個人によっても国務院特許行政部門に出願されたことがなく、かつ出願日以降に公布された特許出
願文書又は公告された特許文書に記載されていないことをいう。
  第5 項 本法にいう従来の技術とは、出
願日以前に国内外で公衆の知るところと
なった技術をいう。

 

<コメント>
旧特許法22条2項では、国内で公知、公用となった場合に新規性がないとする「相対的新規性」が採用されていました。
新特許法22条2項および5項では、「出願日以前に国内外で公衆の知るところとなった技術」に該当しないことを新規性の要件とし、国内および外国で公知、公用となった場合に新規性がないとする「絶対的新規性」が採用されました。
改正後には、中国では、より厳しい「絶対的新規性」の基準が採用されるため、外国企業として、中国以外で発生した公に使用した行為も、中国特許出願の新規性に影響を及ぼすことに注意しなければなりません。

(3) 遺伝資源保護(新特許法5条2項、新特許法26条5項)

改正前 改正後
  第5 条第2 項 遺伝資源によって完成された発明創造については、該当する遺伝資源の入手又は利用が法律、行政法規に
違反している場合は、特許権を付与しない。
  第26 条第5 項 遺伝資源により完成された発明創造について、出願人は特許出願文書上でその遺伝資源の直接的由来と原始的由来を説明しなければならない。出願人が原始的由来について説明できない場合はその理由を説明しなければならない。

 

<コメント>
中国では現在、遺伝資源の流失が深刻になりつつあるため、遺伝資源を有効に管理し、合理的に開発することを目的として新特許法5条2項が新設されました。新特許法26条5項は、出願人が遺伝資源に依存して発明創造を完成した場合の明細書中への開示義務を規定するために新設されました。

(4) 共有特許(新特許法15条)

改正前 改正後
   第15 条 特許出願権又は特許権の共有者の権利行使に関して約定がある場合はその約定に従う。約定がない場合、共有者は単独で実施、又は通常許諾の方法により他人に当該特許の実施を許諾することができる。他人に当該特許の実施を許諾する場合、受け取る使用料は共有者間で分配しなければならない。
 前項に定める場合を除き,共有特許出願権又は特許権の行使には共有者全体の同意を得なければならない。

 

<コメント>
 新特許法15条は、共有特許の場合の権利行使を規定するために新設されました。
 新特許法15条では共有者が単独で他人に通常実施許諾をすることができます。このことは、日本の特許法第73条3項とは異なります。
 新特許法15条の規定により、共同で特許出願するとき、互いに権利行使協議を締結することが推奨されます。そうでないならば、特許登録後に権利の共有者が勝手に非独占的ライセンスを行うこと、たとえば低価格で許諾すること、或いは望ましくない者に許諾することを阻止できなくなります。

(5) 侵害訴訟における特許権者への制限
(a) 特許権侵害紛争における公知技術の抗弁(新特許法62条)

改正前 改正後
   第62 条 特許権侵害紛争中、権利侵害で提訴された者が、その実施した技術又はデザインが従来の技術又は従来のデザインに属することを証明できる証拠を有する場合、特許権侵害とはならない。

 

<コメント>
 改正前の中国の各地の裁判所においては、公知技術の抗弁に関する理解について説が分かれていました。新特許法62条は、中国での公知技術の抗弁におけるこれまでの司法実務のまとめとして新設されました。
 新特許法62条により、裁判所に公知技術か否かの実体的判断を行なう権限が与えられ、無効審判請求の有無に関わりなく、「非侵害」の判断を下すことができることとなります。

(b) 特許権侵害とみなされない状況-Bolar 条項(新特許法69条(5))

改正前 改正後
   第69 条 以下に掲げるいずれかの状況がある場合は、特許権侵害とはみなさない。
(5)行政審査に必要な情報を提供するため、特許薬品又は特許医療機器を製造、使用、輸入する者、及び専らその者のために特許薬品又は特許医療機器を製造、輸入する場合。

 

<コメント>
 新特許法69条は、米国のいわゆるBolar 条項(米国特許法第271 条(e)(1))を取り込むために新設されました。
 Bolar 条項を取り込むことにより、ジェネリック医薬品メーカが、特許医薬品を特許の存続期間満了前に臨床試験を行ない、国家医薬品監督管理局の審査許可を得るための必要なデータを取得することが可能となります。
 新特許法69条の規定について以下の2点に注意すべきです。
 (i) 米国では、Bolar 条項を通してジェネリック医薬品メーカを保護すると共に(米国特許法第271 条(e)(1))、特許権者が自社製品を発売する前に、薬品監督局の行政許可を得るために失われた保護期間も、既に特許の保護期間を適切に延長させることによって補償されています(米国特許法第156 条)。つまり、ジェネリック医薬品メーカと権利者の双方利益は、互いにバランスを取られています。
 しかし、中国の新特許法にはBolar 条項が取り込まれたにもかかわらず、対応する特許の保護期間を適切に延長させる措置が採用されていないため、利益がジェネリック医薬品メーカ側に偏っているとの見解があります。
 (ii) 国際的な最新傾向として、特許方法によって得られる薬品も既にBolar条項の適用範囲内となっています。しかし、中国の新特許法でいうBolar条項は、文言上、特許医薬および特許医療設備のみに触れているに過ぎず、特許方法によって得られる薬品に適用するか否かについては、これからの司法実務を通して確定する必要があります。

(c) 並行輸入(新特許法69条(1))

改正前 改正後
 第63 条 以下に掲げるいずれかの状況がある場合は、特許権侵害とはみなさない。
(1)特許権者が製造、輸入又は特許権者の許諾を受けて製造、輸入した特許製品又は特許方法に基づき直接獲得した製品が販売された後、当該製品を使用、販売の申出又は販売する場合。
第69 条 以下に掲げるいずれかの状況がある場合は、特許権侵害とはみなさない。
(1)特許製品又は特許方法によって直接獲得した製品が特許権者又は特許権者の許諾を得た単位又は個人により販売された後、当該製品を使用、販売の申出、販売、輸入する場合。

 

<コメント>
新特許法69条は、並行輸入の条項を盛り込むために改正されました。
新特許法69条では、特許製品又は特許方法によって直接に得られる製品は、国外で特許権者又はそれが許諾した単位、個人によって販売された後、その製品を再び中国に輸入する場合、特許権を侵害しないとみなされます。すなわち、権利者が他国市場に投入した製品を、第三者が他国から中国に輸入することは特許権の侵害にはなりません。これは、特許権の国際消尽を認めたものです。

(6) 不当に保護期間を延長する問題
(a) ダブルパテント(新特許法9条)

改正前 改正後
第9 条 二人以上の出願人が同様の発明創造についてそれぞれ特許を出願した場合、特許権はもっとも先に出願した者に付与される。 第9 条 同様の発明創造には、1つの特許権のみが付与される。ただし、同一の出願人が同じ日に同様の発明創造について、実用新案特許と発明特許を出願し、先に取得した実用新案特許権がまだ終了しておらず、出願人が当該実用新案特許権の放棄を表明する場合は、発明特許権を付与できる。第9 条 二人以上の出願人が同様の発明創造についてそれぞれ特許を出願した場合、特許権はもっとも先に出願した者に付与される。二人以上の出願人が同様の発明創造についてそれぞれ特許を出願した場合、特許権はもっとも先に出願した者に付与される。

 

<コメント>
 新特許法9条は、同一出願人によるダブルパテントを規定するために新設されました。
 新特許法9条では、同一の出願人が同日に発明および実用新案を申請しても、実用新案および発明のそれぞれについて特許権を付与することができます。但し、発明特許権の付与は、先に特許登録した実用新案特許権であって、かつまだ終了しない実用新案特許権を放棄することを前提とします。

 

(b) 同一出願人による拡大先願(新特許法22条2項)

改正前 改正後
第22 条第2 項 新規性とは、出願日以前に同様の発明又は実用新案が国内外の出版物上で公開発表されたり、国内で公開使用されたことがなく、又はその他の方式で公衆の知るところとなっておらず、また同様の発明又は実用新案が他人により国務院特許行政部門に出願されたことがなく、かつ出願日以降に公開された特許出願文書の中に記載されていないことをいう。 第22 条第2 項 新規性とは、当該発明又は実用新案が従来の技術に属しておらず、同様の発明又は実用新案が出願日以前に如何なる単位又は個人によっても国務院特許行政部門に出願されたことがなく、かつ出願日以降に公布された特許出願文書又は公告された特許文書に記載されていないことをいう。

 

<コメント>
 新特許法22条2項は、同一の出願人が、相次いで実用新案と発明を申請することにより、保護期間を延長するのを避けるため改正されました。
 旧特許法2条2項の「他人」を新特許法22条2項で「如何なる単位又は個人」と改正したことにより、同一の出願人が先に提出した出願も、後に提出する出願の拡大先願になります。このようにすることで、出願人は、相次いで実用新案と発明を申請することにより、保護期間を延長することができなくなります。

 

(7) 意匠に関する改正
(a) 意匠の保護客体に関する限定(新特許法25条(6)

改正前 改正後
第25 条 以下に掲げる各号には特許権を付与しないものとする。
(1)~(5)
第25 条 以下に掲げる各号には特許権を付与しないものとする。
(1)~(5)
(6)平面印刷品の図案、色彩又は二者の結合によって作成された主として標識の機能を果たすデザイン。

 

<コメント>
 新特許法25条(6)は、平面印刷物の図案、色彩または二者の結合によって作成された主として標識の機能を果たすデザインを意匠の保護客体から除外するために新設されました。
 この目的は、中国では意匠出願が形式審査のみで登録されるため、保護客体から上記デザインを除外することで、意匠の質を高めることにあります。

(b) 権利付与の基準(新特許法23条)

改正前 改正後
第23 条 特許権を付与する意匠については、出願日以前に国内外出版物上で公開発表された又は国内で公開使用されたことのある意匠と同一又は類似しておらず、かつ他人が先に取得した合法的権利と衝突してはならない。 第23 条 特許権を付与する意匠は、従来のデザインに属さないものでなければならず、同様の意匠が出願日以前に如何なる単位又は個人によっても国務院特許行政部門に出願されたことがなく、かつ出願日以降に公告された特許文書に記載されていないものでなければならない。
   特許権を付与する意匠は、従来のデザイン又は従来のデザインの特徴を組み合わせたものに比べて、明らかに区別が付くものでなければならない。
 特許権を付与する意匠は、他人が出願日前にすでに取得している合法的権利と衝突するものであってはならない。
 本法にいう従来のデザインとは,出願日以前に国内外で公衆の知るところとなったデザインをいう。

 

<コメント>
 新特許法23条は、意匠について、発明特許および実用新案特許における「拡大先願」と「進歩性」とに似た概念を取り込むことにより、権利付与の基準を発明および実用新案と近いレベルに上げるために改正されました。
 また意匠は、出願日以前に他人が取得した合法的な権利と衝突してはいけません。

 

 

(c) 意匠出願の簡略説明(新特許法27条、新特許法59条2項)

改正前 改正後
第27 条 意匠特許の出願に当たって、願書及び当該意匠の図面又は写真などの文書を提出し、かつ当該意匠を使用する製品及びその所属する分類を明記しなければならない。 第27 条 意匠特許を出願するに当たって、願書、当該意匠の図面又は写真及び当該意匠の概要説明などの文書を提出しなければならない。
 出願人が提出した図面又は写真は特許保護を請求する製品の意匠を明確に示していなければならない。
 第59 条第2 項 意匠特許権の保護範囲は、図面及び写真に示された当該意匠の特許製品を基準とする。  第59 条第2 項 意匠特許権の保護範囲は、図面及び写真に示された当該製品の意匠を基準とし、概要説明は図面または写真に示された当該製品の意匠の解釈に用いることができる。

 

<コメント>
 新特許法27条は、全ての意匠出願において概要説明を提出することを要求し、かつ新特許法59条2項は、その概要説明が図面又は写真で表される該製品の意匠の保護範囲の解釈に用いられることを規定しています。

 

(8) 強制実施許諾の強化(新特許法48条、50条、52条、53条、54条、57条)

改正前 改正後
第48 条 実施条件を有する単位が、合理的な条件で発明又は実用新案の特許権者に、その特許の実施許諾を請求し、合理的な期間内にこれらの許諾が受けられなかった時には、国務院特許行政部門が当該単位の申請に基づき、当該発明特許又は実用新案の実施に強制許諾を与えることができる。 第48 条 下記の状況のいずれかに該当する場合、国務院特許行政部門は、実施条件を有する単位又は個人の申請に基づいて、発明又は実用新案の実施に強制許諾を与えることができる。
第48 条 実施条件を有する単位が、合理的な条件で発明又は実用新案の特許権者に、その特許の実施許諾を請求し、合理的な期間内にこれらの許諾が受けられなかった時には、国務院特許行政部門が当該単位の申請に基づき、当該発明特許又は実用新案の実施に強制許諾を与えることができる。
(1)特許権取得日から3 年経過し、かつ特許出願日から4 年経過しているのに、特許権者が正当な理由無く特許を実施していない、又はその特許を十分に実施していない場合。
(2)特許権者の特許権の行使行為が、法に基づき独占行為であると認定され、当該行為が競争に与えた不利な影響を除去又は縮小させるためである場合。
   第50 条 公共の健康を目的として特許権を取得した薬品に対し,国務院特許行政部門はその製品の製造と中華人民共和国が加盟する関連条約の定めに符合する国又は地域への輸出に強制許諾を与えることができる。
  第52 条 強制許諾が、発明創造の半導体技術に関わる場合、この実施を公共利益の目的と本法第48条第(2)号に定める場合に限定する。
第51 条 本法の規定により強制許諾を申請する単位又は個人は、合理的条件で特許権者と実施許諾契約を締結できなかったとの証明を提出しなければならない。 第53 条 本法第48 条第(2)号、第50 条の規定により与えられる強制許諾を除き、強制許諾は主として国内市場への供給のために実施されなければならない。
第54 条 強制許諾を取得した単位又は個人は、特許権者に合理的な使用料を支払わなければならず、その金額は双方の協議によって決める。双方の協議が成立しなかった場合、国務院特許行政部門によって裁決する。 第54 条 本法第48 条第(1)号、第51 条の規定により強制許諾を申請する単位又は個人は、証拠を提供し、合理的な条件で特許権者に対し特許の実施許諾を請求したが、合理的な時間内に許諾を得られなかったとの証明を提出しなければならない。
  第57 条 強制許諾を取得した単位又は個人は、特許権者に合理的な使用料を支払わなければならず、又は中華人民共和国が加盟する国際条約により使用料の問題を処理する。使用料を支払う場合、その金額は双方の協議によって決める。双方の協議が成立しなかった場合、国務院特許行政部門によって裁決する。

 

<コメント>
 新特許法48条では、強制実施許諾の申請主体が「実施条件を有する単位」から「実施条件を有する単位又は個人」に改正されました。これにより、実施条件を備えた機関や組織に限らず、個人でも実施条件を備えていれば強制実施許諾を申請できることとなりました。
 新特許法48条では、強制実施許諾の条件として、特許権者が正当な理由なく一定期間内に特許を実施しない又は実施が不十分であるとの条件と、特許権者の特許権行使の行為が独占行為であるとの条件とが追加されています。その改正の目的は、強制実施許諾の付与及び強化により、特許権者による特許の迅速かつ十分な実施を促進し、発明・創造の応用を推進し、科学技術の進歩及び経済社会の発展を促進することです。
 また新特許法50条は、公衆の健康を目的として特許権を取得した薬品を所定の国又は地域に輸出する強制許諾を与えるために新設されました。

 

(9) 賠償の強化(新特許法65条)

改正前 改正後
第60 条 特許権侵害の賠償金額は、権利者の権利侵害により受けた損失又は権利侵害者が権利侵害により獲得した利益に基づき確定する。権利侵害を受けた者の権利侵害による損失又は権利侵害者が権利侵害により獲得した利益を確定することが難しい場合は、当該特許許諾使用料の倍数を参照し、合理的に確定する。 第65 条 特許権侵害の賠償金額は、権利者が権利侵害により受けた実際の損失に基づき確定する。実際の損失を確定することが難しい場合、権利侵害者が権利侵害により獲得した利益に基づき確定することができる。特許権者が被った損失又は権利侵害により獲得した利益を確定することが難しい場合は、当該特許許諾使用料の倍数を参照し、合理的に確定する。この賠償金額には、特許権者が権利侵害行為を制止するため支払った合理的な支出も含まれる。
権利者の損失、権利侵害者の獲得した利益及び特許使用料がいずれも確定が難しい場合、人民法院は特許権の種類、権利侵害行為の性質、状況などの要素に基づき、1 万元以上100 万元以下の賠償を確定することができる。

 

<コメント>
 新特許法65条では、特許権侵害に対する賠償金額がアップされました。そのうち、権利者が侵害行為を抑止するために支出する合理的な費用を賠償金額の計算に入れるのみならず、更に法定賠償の上限が50 万人民元から100 万人民元(約USD147,000=約1320万円)にアップされました。

 

(10) 渉外代理資格の廃止(新特許法19条)

改正前 改正後
第19 条 中国に常駐住所又は営業場所を持たない外国人、外国企業又は外国のその他の組織が中国で特許を出願する場合及びその他の特許業務を処理する場合は、国務院特許行政部門が指定した特許代理組織に手続を委託しなければならない。
 中国の単位又は個人が国内で特許を出願する場合及びその他の特許事務を処理する場合は、特許代理機関に委託して処理することができる。
第19 条 中国に常駐住所又は営業所を持たない外国人、外国企業又は外国のその他の組織が中国で特許を出願する場合及びその他の特許業務を処理する場合は、法律によって設立された特許代理機関に委託して処理しなければならない。
 中国の単位又は個人が国内で特許を出願する場合及びその他の特許事務を処理する場合は、法律によって設立された特許代理機関に委託して処理することができる。

 

<コメント>
 新特許法19条1項では、渉外代理資格の概念が削除されました。言い換えれば、特許法改正後、中国では法に基づき設立された特許代理機構は全て渉外特許業務を代理することができます。

以上