米国特許適格性ガイドラインの発表
USPTO は、プロメテウス最高裁判決(Mayo v. Prometheus, No.10-1150, 2012.3.20)を考慮して、2012 年7月3日に、「2010 自然法則を含むプロセスクレームの特許適格性の暫定手法」のガイドラインを発表した。
このガイドラインは、自然法則、自然現象、または自然関係若しくは相関関係(以下、「自然原則」という。)が限定要素となるすべてのプロセスクレームに適用され、プロダクトクレームについては適用されない。
このガイドラインによれば、審査官は、以下の3つの項目(項目Ⅰ~項目Ⅲ)についての検討を行なって、自然法則を規定するクレームが特許適格性を有するか否かを判断すべきとしている。
(1)項目Ⅰ
クレームが、プロセス(単一の行動として規定、または連続した行動若しくは工程として規定)に関するものであるかどうかを決定する。
項目Ⅰは非常に簡単であって、クレームがプロセスまたは方法に関するものでない場合には、項目Ⅱ以降の判断を行なう必要がないとしている。したがって、クレームがプロセスまたは方法のクレームに関するものである場合には、項目Ⅱおよび項目Ⅲの判断が行なわれる。
(2)項目Ⅱ
クレームが、自然原則に焦点を合わせたものであるかどうかを決定する。
項目Ⅱにおいては、自然原則が要素または工程を限定するときに、クレームが自然原則に焦点を合わせたものであるとしている。USPTO は、「自然原則」の用語を非常に明確に規定したプロメテウス最高裁の規定を適用しており、たとえば、医薬のような人工製品が、血液のような自然発生的な物質と相互作用を起こすときに発生する相関関係は、自然原則であると考えられている。そのため、たとえば、診断を行なうのに用いられた相関関係を規定するクレームは、自然原則に焦点を合わせており、項目Ⅲを行なう必要があるとしている。
なお、USPTO は、項目Ⅱが、実務を大きく変化させるものであることを認めている。プロメテウス最高裁以前において、USPTO は、人工医薬の投与の結果と、自然法則との関係については取り扱っていなかったためである。
(3)項目Ⅲ
クレームが、a)自然原則が実際に用いられるようにクレームに自然原則を組み込んだ追加の要素/工程または要素/工程の組合せを含むかどうか、b)追加の要素/工程または要素/工程の組合せがクレームが自然原則そのものよりも有用であることが確証できるかどうかを決定する。
項目Ⅲにおいては、新規または少なくとも従来のものではない工程が、処置方法のクレームおよび診断方法のクレームにおいて特許適格性が認められるために重要視され、患者のチャートに診断を記録するといった従来の方法は、クレームを特許適格性を有する状態にしないであろうことを述べている。
また、ガイドラインは、新規の医薬または現存する医薬の新規の使用については、自然原則との組合せの有無に拘らず、特許適格性を有するものとしている。
(Greenblum & Bernstein, P.L.C. CLIENT ADVISORY July 10, 2012)
(OLIFF & BERRIDGE, PLC SPECIAL REPORT July 12, 2012)