欧州単一特許制度
30年以上に渡って議論されてきた欧州連合の単一特許制度が、2012年12月11日にスペインおよびイタリアを除く25ヶ国による「強化された協力」の下、欧州議会で可決されました。この欧州単一特許制度は、「単一特許規則」、「単一特許の翻訳言語規則」および「統一特許裁判所協定」の3つからなるパッケージで成り立っており、英独仏を含む13ヶ国の批准によって、早ければ2014年1月1日に発効します。その後は、欧州で特許取得する方法として、各国出願、従来のEP出願、欧州単一特許出願の3通りから選択できることとなります。
(1)出願手続
欧州単一特許の出願は、EPOに英独仏のいずれかの言語で出願されます。その後、特許査定が出された時点で、手続言語以外の2つの英独仏言語のクレーム訳を提出して、欧州単一特許および従来のEP特許のいずれかを選択します。
欧州単一特許を選択すれば、25ヶ国に単一の効力を有する欧州単一特許が成立し、その後、EPOに年金を納付するだけで、各国移行手続は不要です。25ヶ国以外の非欧州連合国、スペイン、イタリアについては、従来のEP特許制度に従って、各国ごとに移行登録(翻訳文等)の手続が必要です。
上記手続は、十分な機械翻訳が完備されることを前提としております。そこで、発効から12年間は経過規定として、手続言語が独仏語の場合は英語の翻訳文を、手続言語が英語の場合は独仏語のいずれかの翻訳文を登録から1ヶ月以内にEPOに提出することが必要です。
(2)裁判手続
新たに創設される統一特許裁判所は、欧州単一特許の専属管轄を有し、また従来のEP特許およびSupplementary Protection Certificateも管轄できます。
統一特許裁判所は、一審裁判所、控訴裁判所および特許調停仲裁センターからなっております。一審裁判所は中央部と地方部があり、中央部はパリ、ロンドンおよびミュンヘンに設置され、特許発明のIPCに従って、パリは電気・ソフトウェア・物理を、ロンドンは化学・医薬・バイオを、ミュンヘンは機械を担当します。控訴裁判所はルクセンブルクに設置されます。特許調停仲裁センターはリスボンおよびリュブリャナに設置されます。統一裁判所は、侵害および有効性について判断します。
侵害訴訟は、侵害地の地方部または被疑侵害者居住地の地方部に提起でき、特定の場合には中央部にも提起できます。無効訴訟および非侵害確認訴訟は、中央部に提起できます。地方部での侵害訴訟において、無効の抗弁が出された場合、地方部は侵害と無効の双方を判断しても、あるいは無効判断を中央部に移管して事件を中断してもかまいません。
侵害訴訟の際、欧州単一特許の裁判手続言語への翻訳文の提出が必要です。また、被疑侵害者の請求によって、侵害地または被疑侵害者居住地の言語への翻訳文を提出する必要があります。
今後、欧州単一特許制度の規則等が制定される予定ですので、詳細情報等を入手しましたら、報告致します。
[情報元/担当]深見特許事務所 中村敏夫