インドにおけるバイオテクノロジー特許出願関連トピックス
(1)バイオテクノロジー特許出願の審査ガイドラインの公表
インド知財庁は、昨年12 月19 日から1 ヶ月間パブコメを受け付けた後、本年3 月25 日に「バイオテクノロジー特許出願の審査ガイドライン」を公表しました1 ), 2 )。本審査ガイドラインは、バイオテクノロジーおよびその関連技術の特許出願について、1970 年特許法に基づく統一的かつ一貫した審査実務を確立するために作成されております。特に、4 ヶ所のインド知財庁の審査官および知財庁長官の審査を統一するためとも思われます。本審査ガイドラインで説明されている特許法の条項は、以下の通りです。
2 条(1)(j):新規性(プロダクト・バイ・プロセスクレームを含む)/進歩性/産業上利用性
3 条(b) :公序良俗発明/ヒト、動物、植物、健康または環境に悪影響を与える発明
3 条(c) :自然界に存在する生物または非生物物質の発見
3 条(d) :既知物質の新規な形態であって既知効果を増強しないものの単なる発見/既知物質の新規な特性または用途の単なる発見
3 条(e) :特性の集合にすぎない単なる混合
3 条(h) :農業方法および園芸方法
3 条(i) :治療方法および診断方法
3 条(j) :微生物以外の植物および動物の全部または一部(例えば、種子、亜種、種等)/本質的に生物学的方法
3 条(k) :コンピュータプログラムそれ自体/アルゴリズム/数学的方法
3 条(p) :事実上、伝統的知識である発明
10 条(4):十分な開示/最良の発明実施方法
10 条(5):発明の単一性/クレームの明確性、簡潔性およびサポート
また、インド知財庁は、「伝統的知識および生物学的材料に関する特許出願の処理ガイドライン」もパブコメの後、昨年12 月18 日に公表しております1 ), 2)。
(2)メシル酸イマチニブβ 結晶出願に関するインド最高裁判決3 )
インド最高裁が、2013 年4 月1 日にメシル酸イマチニブβ 結晶出願は3 条(d)等の要件に違反するとの判決3)をしました。
同出願は2006 年1 月に5 件の付与前異議によって拒絶され、知的財産審判部(IPAB)により2009 年6 月に再度拒絶され、最高裁に上告されておりました。本最高裁判決では、1970 年特許法の立法経過、当時のインド製薬業界、GATT-TRIPS 協定、TRIPS 協定と公衆衛生に関するドーハ宣言、それらに伴う特許法改正経過等に基づいて、3 条(d)の趣旨・意味を解釈しています。特に、2005 年改正で3 条(d)に加わった「既知物質の新規な形態であって既知効果を増強しないものの単なる発見」における「既知効果の増強(enhancement of known efficacy)」の意味について詳しく議論がされております。最終的には、出願人はβ 結晶のバイオアベイラビリティが高いことを示しているものの、それによって医薬についての効果(efficacy)が増強されることを立証していないと判断し、3 条(d)等の要件に違反すると判決しております。本判決については、国内外で賛否両論が出されている模様です。
1)http://www.ipindia.nic.in/
2)http://www.jetro.go.jp/world/asia/in/ip/
3)http://judis.nic.in/supremecourt/imgs1.aspx?filename=40212
[情報元/担当]深見特許事務所 中村敏夫