台湾改正特許法
台湾特許法の改正法が2013 年1 月1 日から施行しました。新特許法は全部で159 条あり、内訳は旧法の条文改正が108 条、新しく追加されたものが36 条、削除されたものが15 条です。同日から改正が施行されたのは特許法の他、施行規則及び審査基準又は弁法等で、以下の通りです。
1. 特許法
2. 特許法施行規則
3. 特許規定手数料・料金弁法
4. 外国語書面による特許出願実施弁法
5. 特許出願に関わる生物材料寄託弁法
6. 特許権利期間延長許可弁法
7. 特許年金減免弁法
8. 特許電子出願実施弁法
9. 発明創作奨励・助成弁法
10. 発明特許早期審査作業方案
11. 台米特許審査ハイウェイ(PPH)計画
12. 台日特許審査ハイウェイ(PPH)計画
13. 特許審査ハイウェイを利用する審査の支援作業方案
今回の特許法の改正で、特許の実務面における変更が多数ありますが、その中でも重要なものは以下の通りです。
a)特許出願時に出願権証明書(譲渡書)を提出しなければならないとの規定が削除されました。
b)外国語書面で特許出願する場合は、アラビア語、英語、フランス語、ドイツ語、日本語、韓国語、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語で提出した場合に限り、外国語書面提出日が特許出願日になります。また、中国出願に基づき優先権を主張する場合、簡体字の書面を先に提出し、指定期間内に正体字の中国語に補正することができます。外国語の書面を提出して出願した場合は、出願後4 ヶ月以内に中国語書面を補完しなければなりませんが、1回延期できます。即ち、出願日から6 ヶ月以内に必ず補完しなければなりません。
c)猶予期間の適用範囲を新規性と進歩性に拡大し、且つ特許出願人が自らの意思で刊行物に発表した場合(但し、国内又は外国の特許公報は除く)も6 ヶ月の猶予期間が適用されます。
d)旧法では、優先権証明書は出願日から4 ヶ月以内という固定した期間内に提出しなければならなかったものが、新法では最も早い優先日から16 ヶ月以内に提出できることになりました(発明、実用新案)。意匠特許の場合は、最も早い優先日から10ヶ月以内に補完しなければなりません。
e)生物材料に関する特許出願は、寄託及び生存について1 件にまとめた文書で提出しなければなりませんが、寄託及び生存についてそれぞれ個別の文書で提出する必要はありません。
f)出願人が故意でなく特許出願時に優先権を主張しなかった場合、又は法定期間内に特許証書費及び年金を納付しなかった場合に権利を回復できる規定が新設されました。
g)特許出願人が行なう明細書/図面の自発補正の時間的な制限が削除されました。即ち、出願人は特許査定前であれば明細書/図面を自発補正できます。但し段階によっては、いくつかの制限があります。
h)発明特許出願について、初審における特許査定後30 日以内に出願を分割できるとの規定が新設されました。
i)オフィスアクションに関する手続において、審査官が最終通知を出せる制度が新設されました。審査官が最終通知を出した後は、出願人は明細書/図面等の補正についていくつかの制限を受けます。
j)外国語の原文明細書を提出して出願し、出願日を取得した場合は、誤訳を理由として訂正できるとの規定が新設されました。
k)実用新案特許の訂正には方式審査を採用するとの規定が新設されました。
l)中国語で意匠を意味する用語が「新式様」特許から「設計」特許に変更されました。また、部分意匠、アイコン(ICON)及びグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)意匠、組物の意匠が特許範囲に入れられました。「連合意匠」特許制度が廃止され、「関連意匠」制度が採用されました。
m)特許年金を期限までに納付していない場合に採用されている期限後に納付できる猶予期間と割増料金制度について、期限後1、2、3、4、5~6 ヶ月に分けて、それぞれ20%、40%、60%、80%、100%の割増料金が課されます。出願人が故意ではなく上記の猶予期間内に納付しなかった場合、期限後7~18 ヶ月後に納付する場合は、原特許年金の倍額が割増料金になります。
n)特許権侵害の損害賠償の請求には、侵害行為者に主観上、故意又は過失があることが必要であると明確に規定されました。
o)故意に特許を侵害した場合は、損害額の3 倍額を賠償しなければならないとの規定が削除され、合理的な権利金額を損害賠償額として算定する方式が新設されました。
p)職権に基づく特許権取消制度が廃止されました。誰でも特許無効審判を請求することができるようになりましたが、特許主務官庁は、自ら許可した特許権に対して職権に基づき無効審判を提出することはできません。また、誰でも一部分のクレームに対して無効審判を請求することができ、当該無効審判にはクレーム毎の審査と審査決定を採用する規定、更に複数の無効審判案件及び訂正審判案件には併合審査及び審査決定を採用する規定が新設されました。
今回の特許法改正に伴う実務の変更は非常に多岐に亘ります。ここに含まれる情報は一般的な参考情報であり、法的助言として使用されることを意図していません。従って、IP 案件に関しては弁理士にご相談下さい。
[情報元]ユニオンパテント工業所有権ニュース,2013/2/21
[担当]深見特許事務所 杉本さち子