Samsung 対Apple の特許紛争、そして我々が学び得るもの
2012 年8 月24 日に米国裁判所はSamsung がApple の多くの特許権および意匠権を侵害するとの判決を下しました。Apple への損害賠償は10.5 億ドルと裁定されました。
Apple がさらなる損害賠償を要求している一方、Samsung は再審を請求しています。米国での事件は、Apple とSamsung との間での多くの国々での事件のひとつにすぎません。この記事では、これら事件における主な争点についてまとめています。
(1)米国での事件
2011 年4 月にカリフォルニアにおいて3 件の特許および4 件の意匠登録の侵害についてApple がSamsung を訴えました。うち特許はApple のiOS のユーザインターフェースの構成に関するものであり、意匠はApple のiPhone およびiPad 製品の外観に関するものです。
Apple は、Samsung のスマートフォンおよびタブレットのうち21 製品が侵害していると主張し、それにはSamsung のNexus S 4G, Galaxy II, Galaxy Tab およびGalaxyTab 10.1 が含まれていました。Samsung は自身の6 件の特許権の侵害について応訴を行ないました。
米国では他の多くの国々と異なり特許および意匠の事件が陪審によって判断されます。陪審は、3 週間に及ぶ複雑な法的および技術的議論の後、Samsung の21 製品のうちどれが侵害品なのか、および損害賠償額をいかほどとするかの問題を判断するのに2日間を要しました。陪審は、完全にApple 側を支持しており、Samsung 製品はAppleの特許権および意匠権を侵害しており、Apple 製品はSamsung の特許を侵害していない、との判断を下しました。
陪審は、Samsung による侵害が「故意」であった、すなわちSamsung はその行為がApple の特許権の侵害を構成することを知っていたかまたは知っているべきであったと認定し、2012 年8 月24 日にApple への損害賠償を10.5 億ドルと認定しました。これで問題が終わりというわけではなく、Apple はさらなる損害賠償を「故意」侵害に基づいて求めており、また侵害と認定されたSamsung 製品のいくつかについて販売の差し止めを求めています。Samsung は、再審を求めており、また上訴する選択肢も有しています。2012 年12 月6 日に審問が設定され、双方の主張を聴取することとなりました。
Samsung およびApple の双方は米国裁判所においてさらに他の知的財産権に関連しても訴えを起こしました。
(2)Apple およびSamsung の他の国々での紛争
Apple およびSamsung 間での類似の裁判紛争が他の多くの国々で争われています。ドイツでは2012 年9 月にデュッセルドルフ高等裁判所が先の判決を支持し、Samsung のGalaxy Tab がApple のiPad の欧州共同体意匠を侵害すると認定しました。このドイツの判断は英国およびオランダとは相反しています。2012 年7 月に英国地方裁判所のBirss 判事はSamsung のいくつかの製品(Galaxy Tab を含む)がAppleのiPad の欧州共同体意匠を侵害しないと判断しました。この判断は高等裁判所において2012 年10 月に支持されました。オランダの裁判所においても2012 年8 月に同様の判断に至りました。
オーストラリアではApple はSamsung のGalaxy Tab の販売差し止めを求めました。オーストラリア連邦裁判所が2011 年秋にApple 側を支持する判決を下したものの、それは2012 年にオーストラリア高等裁判所によって覆されました。
韓国では2012 年8 月にソウル中央地方裁判所は、Samsung がApple の1件の特許を侵害する一方、Apple がSamsung の2件の特許を侵害する、と認定しました。また裁判所は双方に小額の損害賠償を認定しました。
日本では2012 年8 月に東京地方裁判所が、Samsung はApple の1 件の特許について侵害をしていない、と認定しました。
(3)まとめ
この問題は終結には程遠いものの、大企業の知的財産権保護の重要性が多くの様々な領域に及ぶことを示しています。大規模な紛争では、訴訟および応訴を多くの様々な領域で行なう能力が会社資源において強力な道具となります。またこの問題は、多くの主要な法域での保護を求めることがいかに重要かを示してくれています。
またこの一連の進行中の紛争は意匠権の重要性を際立たせており、紛争の多くは、Samsung がApple の製品の意匠を模倣したという主張に関連しています。ヨーロッパでは、コストパフォーマンスが高くかつ潜在的に強力な武器が共同体意匠によって得られますので、その上で理想的にはさらに特許も、というのが、製品の外観が重要な分野でいえることでしょう。
[情報元]Venner Shipley’s Intellectual Property Magazine Autumn/Winter 2012
[担当]深見特許事務所 喜多弘行