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米国ITC がディスカバリーの規制を改正<抄訳>

 2013 年5 月20 日に、米国国際貿易委員会(ITC)は、実施規則および手続規則の改正を発表しました。従来の規則には、電子文書のディスカバリー(e-ディスカバリー)の制約に関する規則は含まれていませんでしたが、今回の改正で含まれることになりました。ITC 規則の改正は、以下の3 つのカテゴリーに分類されます。
(1)e-ディスカバリーについての制約
(2)ディスカバリーについての一般的な制約
(3)守秘特権および成果物保護の請求のための手続
(1)e-ディスカバリーについての制約
 改正後の規則は、電子的に貯蔵された情報(ESI)のディスカバリーに特定の制約を与えています。改正後の規則において、製造者は、「過度の負担またはコストのために合理的にアクセス可能ではない」ソースからESI を作成する必要がありません。
 したがって、ディスカバリーを請求する当事者がESI の作成を要求する場合には、「過度の負担またはコストのために合理的にアクセス可能ではない」ことを示す立証義務が他の当事者に課せられることになります。
 ただし、ESI の作成を要求する当事者が、正当な理由を示し、ディスカバリーの条件を特定した場合には、「過度の負担またはコスト」にも関わらず、ITC 行政法判事(ALJ)が、ESI の作成を命じる可能性も残されています。例えば、ALJ は、ESI の作成を要求する当事者に、合理的にアクセス可能ではないソースからのディスカバリーに必要なコストの全部または一部を負担させることを命じるかもしれません。
(2)ディスカバリーについての一般的な制約
改正後の規則において、ALJ は、請求により、または職権で、以下の(ⅰ)~(ⅳ)のいずれかの状況が存在すると判断した場合には、ディスカバリーの回数および範囲を制約しなければなりません。
(ⅰ) 請求されたディスカバリーが、不合理に重複または複製されている、若しくはより便利で、より負担が少なく、より安価な他のいくつかのソースから得られること。
(ⅱ) ディスカバリーを請求する当事者が、その調査において、ディスカバリーによる情報を得る十分な機会を既に有していたこと。
(ⅲ) 対応者が、ディスカバリーを正当化する、若しくはディスカバリーに係る争訟に関連する特定の事実を求める法的立場を放棄したこと。
(ⅳ) その調査の必要性、ITC に判断される争訟を解決する際のディスカバリーの重要性、および社会的関心事を考慮して、提案されたディスカバリーの負担または費用が、これにより想定される恩恵を上回ること。
 なお、337 条調査の圧縮したスケジュールおよびスピードによれば、上記の(ⅱ)の状況が起こる可能性は非常に低いと考えられています。また、上記の(ⅲ)の状況は、「特定の事実」を求める法的立場を放棄することによって、ディスカバリーを回避することができることを認めている点で、ITC の手続に独特なものとなっていますが、「争訟に関連する他の事実」および「異なる事項に関連する事実」についてのディスカバリーを制約するものではありません。
(3)守秘特権および成果物保護の請求のための手続
改正後の規則は、守秘特権および成果物保護の請求のための手続についても定めています。改正後の規則は、当事者に、守秘特権または成果物保護の主張から10 日以内に守秘特権の記録を作成し、守秘特権の記録に必要な内容を特定することを求めています。
 これにより、当事者は、守秘特権および成果物保護を早急に特定する必要がありますので、ディスカバリーの効率が向上すると考えられています。
 従来の規則とは異なり、改正規則は、守秘特権化された文書の不注意による開示を扱う手続について規定しています。
 この手続において、ESI を作成する当事者は、不注意で開示された文書および守秘特権または成果物保護の根拠を受取った人に通知することができ、その通知を受取った人は、受取った日から7 日以内に、以下の(a)~(c)のいずれかのことをしなければなりません。
(a) 文書の返却、取り置き、または破棄。
(b) 請求が決議されるまで、文書の使用または開示の差し控え。
(c) 文書を取り返すための「合理的な手続」。
 当事者も不注意の開示に関係するあらゆる論争を解決するための通知の7 日以内に会議をしなければならない。当事者が論争を解決することができなければ、当事者は、当該会議の後5 日以内に所定の文書の作成を排除するための動議を提出してもよく、ALJ にその論争を解決させてもよい。

[情報元]OLIFF & BERRIDGE, PLC SPECIAL REPORT June 5, 2013
[担当]深見特許事務所 赤木信行