EPC 規則164 の改正
EPO は、PCT 経由の欧州特許出願(Euro-PCT 出願)において、発明の単一性を欠く場合の調査に係る規則を改正し、出願人が追加調査手数料を支払うことを可能にするという以前の実務に戻すと発表しました。これは、不必要な分割出願を回避することができるので、出願人には歓迎すべきニュースです。
現行の、2010 年に施行された規則164 のもとでは、Euro-PCT 出願の出願人は、欧州への国内移行時に発明の単一性がないとEPO が判断した場合に、追加の調査手数料支払いの機会がありませんでした。EPO が国際調査機関であった場合には、出願人は国際段階での調査手数料支払いの判断に拘束されました。EPO が国際調査機関でなかった場合には、EPO は単にクレームの最初に記載されている発明についての調査を行ないました。
この厳格な規則は、特に欧州外の出願人にとって、不公平に思えるものでした。国際段階で追加の調査手数料を支払わなかった場合、出願人は、その他の権利化をしたい発明について分割出願を行なうしかありませんでした。PCT 出願を出願分割して欧州へ移行する規定がないことから、出願人は、もはや権利化を要しない発明についても手数料を支払う必要があり、欧州特許取得に要する費用が膨大になっていました。EPO 以外を国際調査機関とし、国際段階で発明の単一性違反が指摘されなかった出願人にとっては、補充の欧州調査の段階で追加の調査手数料を支払うことができずに、特に不公平でした。
EPO は、基本的に2010 年以前の手続に戻すことによって、Euro-PCT 出願の出願人の懸案に応えました。
改正後の規則164(1)では、EPO が国際調査機関でなかった場合、補充の調査段階で発明の単一性を欠くと判断されれば、出願人には、追加の調査手数料を支払うための2ヶ月の期間が与えられます。
EPO が国際調査機関であった場合には、改正後の規則164(2)によって、欧州への移行時のクレームが単一性を欠くのであれば、追加の調査手数料を支払うための2 ヶ月の期間が与えられますが、追加の調査結果は、最初の審査結果または規則71(3)の通知とともに発行されます。
改正後の規則164(5)によると、上記のいずれの場合にも、追加手数料の要求が妥当でなかったと審査官が判断すれば、支払われた追加の調査手数料は返金されます。
改正後の規則164 は、2014 年11 月1 日から施行され、最初の審査報告(EPO が国際調査機関であった場合)または補充の調査報告(EPO が国際調査機関でなかった場合)が上記の施行日までに作成されていないすべての出願に適用されます。
[情報元]D Young&Co Patent Newsletter No.38 December 2013
[担当]深見特許事務所 村野 淳