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特許法条約を実施するUSPTO による最終規則の発行

 USPTO は、2012 年の特許法条約実施法(PLTIA)の第II 条に基づき、特許法条約(PLT)を実施する最終規則を発行しました。PLTIA は、(1) 第I 条において、ヘーグ協定における産業意匠の国際登録に関する規定と; (2) 第II 条において、特許法条約とを実施するように米国法を補正するために2012 年に制定されました。USPTO は、別途の規則制定においてヘーグ協定に関するPLTIA の条項を実施します。多数の特許出願と特許が対象となる今回の最終規則は、2013 年12 月18 日に施行となります。
 最終規則では、特許出願の提出と取り扱いに関する業務の多数の基準が変更されることになりますが、このスペシャルレポートでは、幾つかの著しい変更に焦点を当てています。
(1)特許出願の提出日に関する最低要件
 新規則では、非仮特許出願の提出日は、明細書にクレームまたは図面があるかないかにかかわらず、USPTO に受理された日付となります。クレームなしで特許出願が提出された場合出願放棄を避けるため、出願人に対して、少なくとも1 つのクレームの提出と140 ドルの手数料(小事業体の場合70 ドル、非常に小さな事業体の場合35 ドル)の納付を行うために2 ヶ月の延長可能期間が与えられることが通知されます。
 提出日獲得のため、提出の際に出願に図面を含める必要はありません。しかし、法律では現在でも、出願人に対して、特許を求める内容を審査官や当業者に理解してもらうのに必要な場合、図面提出を義務付けています。従って、出願提出日の時点で図面が添付されていない場合、特に、必要な図面の提出が、「新規事項」の追加となるのではないかと思われる場合、審査中に特許性についての重要な問題点が提起される可能性があります。
 提出日に関する最低要件に関する新規則は、2013 年12 月18 日に施行となり、その日付以降に提出される全ての特許出願に適用されます。
(2)過去に提出した出願に対する優先権の回復
 新規則では、非仮出願の提出の遅延が意図的でない場合に限り、外国出願または米国仮出願に対する優先権を主張する非仮出願の提出が可能である(現在の期限日を超える)2 ヶ月の追加猶予期間が与えられています。従って、出願人は、12 ヶ月の優先権主張可能期間が切れてから2 ヶ月以内に優先権を回復させるため、嘆願書を添付の上、非仮出願の提出により、外国出願または米国仮出願の提出日の利益を主張することができます。
 この規則は、2013 年12 月18 日に施行となり、その日付の前またはそれ以降に提出される全ての特許出願に適用されます。
 優先権の回復のための嘆願書には、(1) 優先権を主張する出願を記載する優先権主張;(2) 1700 ドル(小事業体または非常に小さな事業体の場合850 ドル)の嘆願書;および(3) 出願提出の遅延が意図的でなかったという供述を含める必要があります。遅延が意図的でなかったかどうかについての質問がある場合、USPTO から出願人に追加情報の提出を義務付けることができます。
 また、PCT 出願では、後の出願の優先権をPCT 規則26bis.3 に基づき回復させることができます。この規則に基づき、PCT 出願での優先権の回復には、出願人は、優先権主張可能期間が切れてから2 ヶ月以内に受理官庁に対して、優先権主張可能期間内にPCT 出願を提出しなかったのは、(i) 十分な配慮があったにもかかわらず発生してしまった; または (ii) 意図的でなかったと記載の上、要求を提出する必要があります。
 非仮出願が特許として既に発行されている場合、優先権主張可能期間が切れてから2ヶ月以内に回復のための嘆願書を添付し再発行出願を提出することで、優先権を回復させることができるかどうかは明確ではありません。米国裁判所は、優先権を主張しなかったこと、または優先権書類の証明書付きコピーを期限までに提出しなかったことは、再発行出願の提出により訂正可能な「間違い」であるとしています。しかし、12 ヶ月の期限が切れてから特許出願を提出して、その際の法律に基づき優先権を主張することができなかったため意図的にその主張を行わなかった場合、再発行出願の提出が可能な「間違い」とみなされるかどうか明確ではありません。
 また、新規則において、優先権主張の遅延提出と外国優先権書類の証明書付きコピーの遅延提出が可能です。優先権主張と外国優先権書類の証明書付きコピーの提出が義務付けられている実際の期間は、現在でも変わりません((a) 出願の実際の提出日から4ヶ月、または (b) 過去の外国出願の提出日から16 ヶ月のいずれか遅い方)。優先権主張が意図的に遅延されたものではなく、1700 ドル(小事業体または非常に小さな事業体の場合850 ドル)を納付し、出願人による遅延が意図的ではなかったことを記載した嘆願書が提出された場合、その主張の遅延提出は認められる可能性があります。USPTO から、遅延が意図的でないことについての質問がある場合、出願人に追加情報を求めることができます。出願人が、200 ドル(小事業体の場合100 ドル;非常に小さな事業体の場合50 ドル)の嘆願書費用を納付し、(意図的でない遅延の基準より非常に困難な基準である)適切かつ十分な理由を記載する嘆願書を提出した場合、外国優先権書類の証明書付きコピーの遅延提出も、認められる可能性があります。非仮出願と国内段階に移行するPCT 出願において、これらの嘆願書を利用することができます。
(3)遅延提出または費用遅延納付に関する「不可避の」基準の削除新規則では、放棄された特許出願の復活、再審査手続における特許所有者による遅延応答の受諾、優先権の遅延主張の受諾、外国または米国仮出願に対する優先権の回復、維持費の遅延納付の受諾に関する単一の均一基準(「意図的でない」遅延)が適用されています。従って、「不可避の」基準を利用して、放棄された特許出願または無効特許を復活させることはできず、意図的でない遅延に基づく理由に限り、復活させることができます。
 意図的でない遅延の基準に依存する嘆願書には: (1) オフィスアクションまたは通知に対応する回答(または、関連費用、優先権主張等); (2) 1700 ドル(小事業体または非常に小さな事業体の場合850 ドル)の嘆願書費用; (3) 必要な場合、ターミナルディスクレーマー; (4) 回答(または費用等)の提出期限日から嘆願書提出までの全ての遅延は、意図的でなかったことを記載する供述を含める必要があります。
 これらの新規則は、2013 年12 月18 日に施行となり、その日付の前またはそれ以降に提出される全ての出願と、その日付の前またはそれ以降に提出される出願からの特許に適用されます。
 PCT 出願について、国際事務局は、意図的でない遅延基準と「当然の注意を払ったにもかかわらず」に関する基準の両方を利用して、優先権の回復の要求を取り扱います。従って、PCT 出願の提出の時点で優先権主張可能期間が切れていることを知っており、「当然の注意を払ったにもかかわらず」に関する基準に基づく取り扱いを希望する出願人には、国際事務局を受理官庁としてPCT 出願を提出し、その基準に基づく手続を利用するというオプションがあります。
 また、新規則では、維持費の遅延納付について、意図的でない遅延の基準を利用するための従来の24 ヶ月の期間限定が削除されています。嘆願書提出により、遅延が意図的でないことが記載されている場合、維持費の遅延納付がいつでも認められます。従来、そのような24 ヶ月以上の遅延があった納付は、非常に困難な「不可避の」基準を満たしたという充分な証拠が提出された場合に限り可能でした。USPTO が嘆願書を受理し、維持費の遅延納付を認めた場合、特許はこれまでに期限切れとならなかったとみなされます。
(4)特許期間調整条項の変更
 出願提出日(またはPCT 出願の国内段階の開始日)から8 ヶ月以内に、出願が審査される状態になかった場合、特許期間調整の短縮となります。調整期間は、出願提出日(またはPCT 出願の国内段階の開始日)から8 ヶ月の日付から、出願が審査される状態となった日付までの日数により短縮となります。
 規則では、出願に少なくとも1 つのクレームと必要な全図面(および他の必要な書類)を含む明細書が含まれている際、出願が審査される状態にあると記載されています。これらの変更は、2013 年12 月18 日以降に提出した非仮出願と、国内段階が2013 年12月18 日以降に開始となるPCT 出願とにのみ適用となります。

[情報元]OLIFF & BERRIDGE, P.L.C., SPECIAL REPORT, November 7, 2013
[担当]深見特許事務所 西川信行