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CAFC の決定がアップルとサムスンのスマートフォン戦争の次の小競り合いの お膳立てをする

(1)概要
 地裁がサムスンの特定のスマートフォンに対するアップルの永久的差止命令の請求を認めなかった事案において、CAFC は、回復不能の被害の分析、特に「因果関係」の要件を再検討するために、地裁に差し戻しました(Apple v. Samsung Electronics , CaseNo. 13-1129 (CAFC, Nov. 18, 2013))。
(2)内容
 CAFC のパネルは、全員一致で、地裁がサムスンのスマートフォンに対する意匠特許の主張に関連するアップルの永久的差止命令による救済措置を認めないとの判断は裁量の範囲内であったと結論しましたが、アップルの実用特許に関して、アップルが、クレームの特徴とスマートフォンに対する消費者の需要との間の因果関係を確立する十分な証拠を示しているかどうかを決定するために地裁に事案を差し戻しました。
 2012 年7 月の陪審後、サムスンの26 のスマートフォンがアップルの主張する6 つの特許権の1 つ以上を侵害していることが判明しました。また、サムスンのスマートフォンの6 つが、アップルのi-phone のトレードドレスを希釈していることも判明しました。
 その後、アップルは、永久的差止命令による救済を請求しましたが否定されたため控訴しました。
 CAFC では、回復不能な損害(すなわち、マーケットシェアの損失、将来の売上の損失、アップルの「エコシステム」に対する傷)と特許権侵害との間に「十分に強力な因果関係」が存在したかどうかが論争となりました。
 アップルは、永久的差止命令には「因果関係」が要件とされるべきではないと主張しましたが、CAFC は、因果関係の要件は回復不能な損害の分析に必要であり、特許権侵害によって引き起こされた回復不能の損害と、その他の法律上の争訟によって引き起こされた回復不能な損害との間を区別する1つの方法であるとして同意しませんでした。
 しかしながら、CAFC は、地裁の決定が差し止めの分析において回復不能な損害の部分にいくつかの欠陥を含んでいたため、地裁に事案を差し戻しました。また、CAFC は、サムスンの金銭的な損害の支払い能力を回復不能な損害と一致させた地裁の決定にも欠陥を発見しました。さらに、CAFC は、トレードドレス希釈に基づくクレームに関して、「議論の余地がない証拠」が本事案における製品はもはや販売されておらず、サムスンがそれらの製品の販売を再開する証拠がないとする地裁の意見に同意しました。
 CAFC は、「不利益のバランス」と「公共の利益」との間の分析に関する地裁の判断は妥当であると判断し、証拠を「再秤量」することを却下しました。特に、「公共の利益」の要素について、アップルの特許は複数の特徴を持つ製品の一部の特徴のみをカバーしており、「公共の利益」は市場からスマートフォンを除去することを支持していないとする地裁の意見に同意しました。同様の意見が、特別に含まれた部品(例えば、5ドルの集積回路)が特許権を侵害するという主張に基づき、特許権者が当該部品を含む下流製品(デジタルTV 等)を排他する命令を求めるITC337 条でも挙げられています。

[情報元]McDermott Will & Emery, IP Update November 19, 2013
[担当]深見特許事務所 赤木信行