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中国職務発明条例草案

 2014年4月1日、中国の国家知識財産権局は「職務発明条例草案」を公表し、現在、意見募集を行っています。2012年11月12日に公表された職務発明条例草案は、従業者側には有利である一方、企業側にとって負担となる規定が多かったのですが、新たな草案では、企業側の負担が若干緩和されています。以下、今回の草案のポイントについて説明します。
(1)発明報告制度の新設
 職務発明に対する事業体の合法的権益を保護し、権利帰属に関する紛争の発生を防止するために、ドイツ、フランスなどの発明申告制度を参考にして発明報告制度を創設しました。発明者は、事業体の業務に関わる発明を行った後、発明の完成日から2ヶ月以内に事業体に報告し、当該発明が職務発明であるか、非職務発明であるかの意見を提示しなければなりません。発明者が職務発明に該当すると考える場合、事業体は、発明者が報告を行った日より6ヶ月以内に国内で知的財産権を出願するか、技術秘密として保護もしくは公開するかを決定し、かつ決定を発明者に書面で通知しなければなりません。なお、新たな草案では、上記6ヶ月の期限については、別途約定できると規定されています。
(2)職務発明の奨励金および報酬金
 草案は、職務発明の奨励金および報酬金について「約定優先」の原則を採用しています。即ち、事業体は、奨励金および報酬金を支給する手順、方式、金額について、発明者と約定を交わすことができます。草案は、約定が行われていない状況下における奨励金および報酬金の最低額、支給期限を規定しました。地域間で収入格差が大きく、企業ごとに状況も大きく異なるため、草案は、発明者の所属事業体における在職従業員の平均月給を基数として報奨金の最低金額を計算するよう規定しました。たとえば、発明専利権の奨励金の場合、奨励金の総額は、最低でも当該事業体の従業員の平均月給の2倍を下回ってはいけません。また職務発明の報酬金については、発明専利権の実施による営業利益の5%を下回らない額、販売利益の0.5%を下回らない額または発明者個人の給与の合理的な倍数をもって確定するなどと規定されました。
(3)監督検査制度の導入
 草案が規定する関連の制度と措置の実施が徹底されるように、監督検査制度が規定されました。草案では、知的財産権主管部門、科学技術行政部門、人力資源社会保障行政部門が共同して職務発明制度の実施に対する監督管理の責任を負い、当事者の請求または通報情報に基づき、事業体の職務発明制度の履行状況を監督検査する権利を有するとしました。前回の草案では、職権による監督検査制度が規定されていましたが、新たな草案ではこの規定は削除されました。

[情報元]中華人民共和国 国家知識財産権局HP
http://www.sipo.gov.cn/ztzl/ywzt/zwfmtlzl/
(参考情報)日本貿易振興機構 北京事務所知的財産権部HP
[担当]深見特許事務所 小田晃寛