欧州におけるGUI保護のためのハードルの低下傾向について(抄訳)
グラフィカル・ユーザ・インターフェイス(GUI)は、EPOにおいては、従来より情報の1つの表示形態とみなされ、法上の保護対象とされていませんでした。しかしながら、欧州においてGUIの保護を得ることが、T0781/10審決によって若干は容易になったようです。
審判の主題は、ユーザ・インターフェイスに含まれるアイコンによってコンテンツを選択することに関係します。各アイコンは方向ボタンを用いて「フォーカス」を移動させることによって選択可能であり、クレームは、「フォーカスが移動すると、フォーカスの移動する方向に応じて背景画面の視点を変化させるように構成されてなる、背景画面管理部」という技術的特徴で特徴付けられています。
審決部は、潜在的に存在する解決課題は「ユーザが現在選択しているメニュー階層をより気づかせ、それにより、より効果的なマン・マシン・インターフェイスを得ること」であると判断しました。本クレーム1でもたらされる解決手段は、「入力装置の正確さを向上させる強調効力」によって、ある程度先行技術に対する技術的な寄与をもたらすことと言えます。従って、背景画像の視点の変化に関する特徴は、単なる情報の表現以上のものと言われました。この審決は、テストとして以下のように適用され得ます:
①人が装置と相互作用しているか?
②この相互作用は測定可能であるか?
③この測定の値は、たとえばディスプレイ上の画像の変化といったような、動作する装置の根拠を形成するものであるか?
この審決は、人とGUIがマン・マシン・インターフェイスと考えられるべき装置との間で連続的な相互作用がある必要がないことを許容しています。そのような相互作用が情報の単なる表示を越えるものであることとしたこの審決に帰着すると、同じことが多くのGUIについて言えます。
EPOの審査ガイドラインは、上記の判例法に合意して、次のように述べています:「・・・色、形状、スクリーン上のアイテムのサイズ、レイアウトあるいは配置は通常GUIの技術的側面ではありません。・・・しかしながら、これらの特徴が相互作用ステップ・・・と結合する場合、審査官は、それらが入力装置の正確さの増強により特別の技術的効果を達成するために必要かどうかをチェックしなければなりません。達成された技術的効果はより効率的なマン・マシン・インターフェイスかも知れません。」
したがって、もしもGUIの一部である画像が技術的手段によって変化するという反論をしたいのであれば、発明がマン・マシン・インターフェイスを改善すると主張することが重要です。GUIディスプレイの配置にもっぱらユーザの精神の行為によって実現されない技術的効果があることが示されるかも知れない場合、その反論はさらに強くなります。
[情報元]Inside IP (Venner Shipley’ IP magazine), Spring/Summer 2014
[担当]深見特許事務所 丹羽愛深