三井日本料理の敗訴で台湾商標出願「三井 MITSUI 及び図形」の拒絶が確定
台湾において、三井日本料理餐廳有限公司(以下、「三井日本料理」)は、2010年に、商標「三井 MITSUI 及び図形」について、当時の商標法施行細則13条で規定される商品及び役務区分表第35類「食品小売り,飲料品小売り,農産物小売り,水産物小売り」等を指定役務とする出願を行ないました。知的財産局は、審査の結果、当該商標は、日本企業である三井物産株式会社(以下、「三井物産」)の「三井」、「三井物産」、「MITSUI」等の商標と構成が類似しており、両社の商標が指定又は使用する役務の間にも関連性がある上、三井物産の商標は三井日本料理の出願前に登録されており、需要者が一般に認知し、著名と言える域に達していると認定しました。そして、出願商標「三井 MITSUI 及び図形」は、需要者間で容易に誤認混同を生じさせるとして、拒絶査定しました。三井日本料理は、これを不服として行政訴願を提起しましたが、訴願機関により棄却されたため、更に不服として、行政訴訟を提起しました。
当該行政訴訟において、三井日本料理は、商標は属地主義であるところ、三井物産は台湾において高い知名度を有しておらず、レストランを開業したり、食品小売り業務に従事したりしていない上、出願商標「三井 MITSUI 及び図形」は、外観、称呼、観念ともに三井物産の商標とは異なり、指定役務も異なるため、両商標は類似商標ではないと主張しました。
一方、知的財産局は、両社の商標の指定役務の区分は異なるものの、三井物産の「三井」、「三井物産」、「MITSUI」等の商標は著名商標であり、三井物産の知名度により、その保護範囲も自ずと広くなるので、指定役務の区分だけに保護が制限されるべきではないと主張しました。
知的財産裁判所は、両社の商標の識別力の強さ、その近似度、商品又は役務の類似度等の関連因子の強弱、相互に影響し合う関係性又は各因子等を参酌した結果、出願商標「三井 MITSUI 及び図形」は、商標法30条1項11号前段に定める不登録事由に該当するため、三井日本料理の主張を棄却するとの判決を下しました。三井日本料理は、当該判決を不服として上訴を提起しましたが、最高行政裁判所は、三井日本料理が原判決にどのような法令違反があるかを具体的に指摘していないと認定して、上訴を棄却する判決を下し、出願拒絶が確定しました(2014年10月)。
[情報元]TIPLO News, November 2014
[担当]深見特許事務所 小野正明