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補正で追加された新規事項を削除して元に戻す訂正請求は不適法

 出願段階で補正によって追加された新規事項を削除して、出願当初の明細書および図面の記載に戻す訂正請求は、韓国特許法136条1項で規定する訂正要件である(1)特許請求の範囲の減縮、(2)誤記の訂正、(3)不明瞭な記載の明確化のいずれにも該当しないため、適法でないと判断されました(特許法院2014.5.15言渡2013ホ7106判決)。
(1)経緯
 この件では、元々、原告(無効審判被請求人)は、実施例および図面を追加する自発補正を行ない、これは新規事項追加には該当する不適法な補正でしたが、審査官はこれを見逃し、補正却下することなく特許登録されていました。これに対して、被告(無効審判請求人)が新規事項追加を理由に無効審判を請求し、原告は、追加された実施例および図面を削除する訂正請求をしました。被告はこの訂正請求の適法性について争いませんでしたが、特許審判院は職権で、この訂正請求は不適法であり認められないと判断しました。その結果、本件特許は新規事項が追加されたまま登録されたものであるから登録無効という審決が出され、原告はこれを不服として審決取消訴訟を提起していました。
(2)法院の判断
 審決取消訴訟において特許法院は、追加された実施例および図面を削除するという本件訂正請求は、特許請求の範囲の減縮には該当せず、さらに、誤って記載されたものを訂正する場合にも該当せず、さらに不明確な記載を明確にする場合にも該当しないと判断し、よって、本件訂正請求は不適法なものであると判断しました。その結果、本件補正は新規事項追加に該当するとして本件特許は無効と判断されました。
(3)実務上の指針
 この判決からすると、出願段階で新規事項追加となる補正を行ない、この補正が審査官に見過ごされて登録されたとしても、のちに無効審判などの争いが生じた際にはこの新規事項を削除する訂正によって新規事項追加の無効理由を克服することはできないといえます。したがって、出願段階での補正には十分に留意する必要があるといえます。

[情報元]金・張法律特許事務所,Newsletter 2014年11月号
[担当]深見特許事務所 和田吉樹