当事者系レビュー(IPR)における特許無効を唱えた特許審判部(PTAB)の最終決定に対する最初のCAFC判決
2015年2月4日、CAFCは、In re Cuozzo Speed Tech., LLC事件において、IPRにおける特許無効を唱えたPTABの最終決定に対する最初の判決を出しました。本判決は、裁判官の間で意見が分かれて2対1で、PTABの自明性分析の決定を支持して、(ⅰ)CAFCは、中間判決として、もしくは最終判決の一部として、IPR開始のPTABによる決定を見直す権限に欠けることを確認し、(ⅱ) IPRの特許クレームは、地方裁判所の訴訟で適用される幅の狭い基準ではなく、BRI(最も幅の広い合理的なクレーム解釈)基準に基づき解釈されるべきである、としました。
Cuozzo社は、(ⅰ) IPRは開始されるべきではなかった、(ⅱ) PTABは、地方裁判所の幅の狭い基準でなく、BRI基準に基づきクレームを不適切に解釈した、(ⅲ) PTABが、Cuozzo社によるクレームを補正するための申立を拒否したことは誤りであったと主張し、PTABの最終決定を不服として、上訴しました。
(ⅰ) について、CAFCの裁判官からなるパネルの多数派は、有効性に関する最終決定の見直しの一部としても、CAFCにはIPR開始のPTABの決定を見直す権限がないとしたため、Cuozzo社の主張に直接に言及しませんでした。
(ⅱ) について、パネルの多数派は、PTABがBRI基準に基づきクレームの用語を適切に解釈したとしました。
(ⅲ) について、パネルの多数派は、AIA(米国発明法)とその規則の両方がIPRにおいて補正によりクレームの幅を広げることを禁止していることを認め、PTABがCuozzo社の補正をするための申立を拒否したことを支持しました。
本判決に基づき、実務上の留意点は、以下のとおりです。
最高裁または米国議会が関与しない限り、クレームはBRI基準に従いIPRにおいて適切に解釈されます。従って、IPRを要求する嘆願書を準備するためにクレームを評価する際、またはIPRにおいて特許を弁護する際、嘆願者および特許権者は、この基準を適用しなければなりません。
また、PGR(特許発行後レビュー)の手続においても、IPRと同一の規則が対象となるため、BRI基準が適切に適用されると思われます。
同様に、最高裁または米国議会が関与しない限り、PTABがIPRにおいて最終決定した後であっても、IPR開始のPTABの決定について上訴することはできません。これは、嘆願者または特許権者が、IPRの開始/拒否のPTABの決定に対して異議を唱える場合、規則42.71(d)に基づき再検討要求を提出する手段のみが残されていることになります。
[情報元]OLIFF SPECIAL REPORT, February 10, 2015
[担当]深見特許事務所 小寺 覚