台湾特許法の改正について
さて、台湾特許法の改正法が2011年12月21日に公布され、2012年末あるいは2013年始頃に施行の予定です。そこで、台湾特許法の「改正のポイント」と、その「改正内容の概略」をまとめましたので、下記の如くご報告申し上げます。
1.改正のポイント
今回の台湾特許法の改正のポイントは、以下のとおりです。下記の(1)から(12)に示す改正ポイントは、台湾経済部知慧財産局のウェブサイトに掲載された内容に対応しています。(http://www.tipo.gov.tw/ch/News_NewsContent.aspx?NewsID=5571)
<2012年台湾特許法改正ポイント>
(1)新規性喪失例外規定拡大(改正法第22条、第122条)
(2)権利回復(改正法第29条、第52、第70条)
(3)特許請求の範囲および要約書の独立(改正法第25条)
(4)自発補正期間緩和(改正法第43条)/分割出願の時期規制緩和(改正法第34条)
(5)特許権の効力が及ばない範囲の修正/国際的消尽論明確化(改正法第59条)
(6)医薬品/農薬品の特許権存続期間延長規定修正(改正法第53条、第56条)
(7)強制実施権関連規定修正(改正法第87条から第89条)
(8)開発途上国等の公衆衛生問題規定の新設(改正法第90条)
(9)無効審判制度規定修正(改正法第71条、第73条、第77条、78条)
(10)特許権侵害規定修正(改正法第96条から98条)
(11)特許出願/実用新案登録出願の2出願制度新設(改正法第32条)
(12)意匠制度改正(改正法第121条、第128条、第129条)
ここに含まれる情報は一般的な参考情報であり、法的助言として使用されることを意図していません。従って、IP 案件に関しては弁理士にご相談下さい。
2.改正内容の概略
上記致しました改正ポイント(1)から(12)の改正内容の概略を以下に示します。
(a) 新規性喪失例外規定の範囲が拡大されました。
(b) 現行法では、新規性喪失の例外は、新規性を喪失した発明と同一の発明を出願した場合に限られていましたが、改正法では進歩性の判断においても、新規性喪失例外の適用を受けることができることになりました。
(c) 新規性を喪失する行為についても、現行法の「実験公開」、「政府主催展覧会等」、「出願人の意図に反して漏洩したもの」に、「刊行物発表」が加えられました。
(a) ここでの優先権は、台湾と相互に優先権を承認する外国またはWTO加盟国においてした特許出願を基礎にして、台湾に特許出願する際に主張する優先権を指しています(改正法第28条)。
(b) 出願人が故意にではなく、特許出願と同時に優先権を主張しなかった場合等、最先の優先日から16月以内に、優先権主張の回復を申請することができます(改正法第29条)。
(c) 特許査定された場合、出願人は査定書送達後3月以内に設定登録料および1年目の特許料の納付後に特許権が付与されますが、出願人が故意にではなく、所定期限内に設定登録料および特許料を納付しなかった場合、費用納付期限満了後6月以内に設定登録料および2倍の1年目の特許料を納付することで、特許権が付与されます(改正法第52条)。
(d) 現行法では、2年目以降の特許料を納付すべき期間内に納付しなかった場合、期間満了後の6月以内に追納することができましたが、改正法では、さらに、特許権者が故意にではなく、期限満了後1年以内に、特許権の回復を請求(3倍の特許料の追納)することができます(改正法第70条)。
出願書類として、「特許請求の範囲」および「要約書」が、「明細書」から独立した書類に変更されました。
(a) 現行法は、自発補正期間が、出願日(または優先日)から15月でしたが、改正法では、審査意見通知書の発行前であれば補正を行なうことができます(改正法第43条)。
(b) 原出願の特許査定書(再審査での査定は除く)の送達後30日以内に、分割出
(1) 新規性喪失例外規定拡大
出願人自身の意図により刊行物に発表した場合も、新規性喪失の例外を主張できる規定が加えられた(改正法第22条)。
(2) 権利回復
出願時に優先権を主張せず、または法定期限内に設定登録料あるいは特許年金を納付しないことにより特許権を失った場合、故意でなければ権利回復が認められる規定が加えられた(改正法第29条、第52条、第70条)。
(a) ここでの優先権は、台湾と相互に優先権を承認する外国またはWTO加盟国においてした特許出願を基礎にして、台湾に特許出願する際に主張する優先権を指しています(改正法第28条)。
(b) 出願人が故意にではなく、特許出願と同時に優先権を主張しなかった場合等、最先の優先日から16月以内に、優先権主張の回復を申請することができます(改正法第29条)。
(c) 特許査定された場合、出願人は査定書送達後3月以内に設定登録料および1年目の特許料の納付後に特許権が付与されますが、出願人が故意にではなく、所定期限内に設定登録料および特許料を納付しなかった場合、費用納付期限満了後6月以内に設定登録料および2倍の1年目の特許料を納付することで、特許権が付与されます(改正法第52条)。
(d) 現行法では、2年目以降の特許料を納付すべき期間内に納付しなかった場合、期間満了後の6月以内に追納することができましたが、改正法では、さらに、特許権者が故意にではなく、期限満了後1年以内に、特許権の回復を請求(3倍の特許料の追納)することができます(改正法第70条)。
(3) 特許請求の範囲および要約書の独立
特許請求の範囲と要約書を明細書から独立させる(改正法第25条)。
出願書類として、「特許請求の範囲」および「要約書」が、「明細書」から独立した書類に変更されました。
(4) 自発補正期間緩和/分割出願の時期規制緩和
自発補正ができる時期の制限が廃止された(改正法第43条)。また、特許出願は初審査の特許査定後30日以内に分割出願を提出することができるように、規制が緩和された(改正法第34条)。
(a) 現行法は、自発補正期間が、出願日(または優先日)から15月でしたが、改正法では、審査意見通知書の発行前であれば補正を行なうことができます(改正法第43条)。
(b) 原出願の特許査定書(再審査での査定は除く)の送達後30日以内に、分割出
(1) 新規性喪失例外規定拡大
出願人自身の意図により刊行物に発表した場合も、新規性喪失の例外を主張できる規定が加えられた(改正法第22条)。
(5) 特許権の効力が及ばない範囲の修正/国際的消尽論明確化
特許権の効力が及ばない範囲として、薬物許認可登録許可または国外医薬品の販売許可を目的とする研究・試験行為などが加えられた(改正法第59条、第60条)。また、国際的消尽論を採用することを明確にした(改正法第59条第1項第6号)。
(a) 特許権の効力は、薬事法が定める薬物許認可登録許可または国外薬物販売許可を取得することを目的として従事する研究、試験およびその必要な行為には及ばない、旨の規定が新設されました(改正法第60条)。
(b) 特許権の効力が及ばない事項として規定されている、「特許権者が製造したまたは特許権者の同意を得て製造した特許物品が販売された後、該物品を使用するまたは再販売する行為。前記の製造、販売行為は台湾に限らない。」に対して、「販売できる区域は、法院(裁判所)が事実に基づいて認定する。」との明文が削除されました(現行法第57条2項参照)。
(6) 医薬品/農薬品の特許権存続期間延長規定修正
医薬品または農薬品の特許権存続期間延長規定が修正された(改正法第53条、第56条)。
(a) 現行法第52条の「その取得に特許出願の公告日から2年以上の期間を要する場合」および「2年から5年までの延長を申請することができる」という制限が削除されました。ただし、「許可証を取得するための期間が5年を超える場合も、その延長期間は5年まで」の規定は削除されていません。
(b) 特許庁によって特許権存続期間の延長が許可される範囲は、許可証に記載されている有効成分および用途で限定する範囲のみとなります(改正法第53条、第56条)。
(7) 強制実施権関連規定修正
強制授権(強制実施権許諾)事由、手続き、および同時算定補償金に関する規定が修正された(改正法第87条から第89条)。
緊急時の対応の迅速化、台湾実務の実情、専門家の意見、諸外国での規定を鑑みて、強制実施権の設定事由、手続に関する規定が改正されました。
(8) 開発途上国等の公衆衛生問題規定の新設
開発途上国の公衆衛生問題の解決、および低開発国の公衆衛生問題の解決を支援するため、医薬品の製造および需要国に輸出することに関する強制実施権が申請できる規定が加えられた(改正法第90条)。
医薬の製造能力がないまたは不十分な国が、エイズ、肺結核、マラリアまたはその他の伝染病の治療に必要な医薬品を入手することをサポートするため、特許庁は、請求により、当該国が必要な医薬品を輸入できるよう請求者に特許の強制実施権を設定することができることとなりました。
(9) 無効審判制度規定修正
職権による無効審判を廃止すること(改正法第71条)、一部の請求項に対して無効審判が請求できること(改正法第73条)、無効審判と訂正案の併合審理、および複数の無効審判の併合審決など、無効審判制度が修正された(改正法第77条、第78条)。
(a) 改正法では、現行法第67条の「職権で特許権を取り消さなければならない」の規定が削除されました(改正法第71条)。
(5) 特許権の効力が及ばない範囲の修正/国際的消尽論明確化
特許権の効力が及ばない範囲として、薬物許認可登録許可または国外医薬品の販売許可を目的とする研究・試験行為などが加えられた(改正法第59条、第60条)。また、国際的消尽論を採用することを明確にした(改正法第59条第1項第6号)。
(6) 医薬品/農薬品の特許権存続期間延長規定修正
医薬品または農薬品の特許権存続期間延長規定が修正された(改正法第53条、第56条)。
(7) 強制実施権関連規定修正
強制授権(強制実施権許諾)事由、手続き、および同時算定補償金に関する規定が修正された(改正法第87条から第89条)。
(8) 開発途上国等の公衆衛生問題規定の新設
開発途上国の公衆衛生問題の解決、および低開発国の公衆衛生問題の解決を支援するため、医薬品の製造および需要国に輸出することに関する強制実施権が申請できる規定が加えられた(改正法第90条)。
(9) 無効審判制度規定修正
職権による無効審判を廃止すること(改正法第71条)、一部の請求項に対して無効審判が請求できること(改正法第73条)、無効審判と訂正案の併合審理、および複数の無効審判の併合審決など、無効審判制度が修正された(改正法第77条、第78条)。
(b) 特許権に2以上の請求項がある場合、一部の請求項について無効審判を請求することができます(改正法第73条)。
(c) 無効審判の審理期間中に、訂正請求がある場合、両方の審理が併合して行なわれます(改正法第77条)。
(d) 同一の特許権に複数の無効審判がある場合、特許庁が必要であると認めるとき、は審査が併合されます(改正法第78条)。
(10) 特許権侵害規定修正
権利侵害の損害賠償要件の主観要件を明確にした(改正法第96条)。また、損害賠償の計算方法(改正法第97条)および特許権表示に関する規定が修正された(改正法第98条)。
(a) 特許権者はその特許権を侵害するものについて、その排除を請求することができることが明確に規定されました。また、特許権者は故意または過失によりその特許権を侵害した者に対して、損害賠償を請求することができることも明確に規定されました(改正法第96条)。
(b) 損害賠償の計算方法が見直されました(改正法第97条1号から3号)。
(c) 特許権表示に関する規定が新設されました(改正法第98条)。
(11) 特許出願/実用新案登録出願の2出願制度新設
同一人が同日に特許出願と実用新案登録出願をそれぞれ出願できる規定が追加された。台湾特許庁が特許出願の許可を認めるとき、いずれか1つの権利を選択するよう出願人に知らせる。出願人が特許権を選択した場合に、実用新案権は最初からなかったものとみなす(改正法第32条)。
(a) 特許出願と実用新案登録出願との2出願制度が新設されました。
(b) 特許査定前に、既に実用新案権を取得している場合、特許庁は期限を指定していずれか1つの権利を選択するよう出願人に通知がなされます。なお、実用新案登録出願は、実体的要件については無審査です。
(12) 意匠制度改正
部分意匠、コンピューターアイコン(Icons)、グラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)(改正法第121条)、および組物意匠を認める規定が加えられた(改正法第129条)。また、関連意匠制度も追加された(改正法第128条)。
(a) 部分意匠、コンピューターアイコン(Icons)、およびグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)が、意匠の保護対象に加えられました(改正法第121条)。
(b) 関連意匠制度が新設されました(改正法第128条)。
3.その他の法改正のポイント
上記(1)から(12)の改正ポイント以外に、下記の改正のポイントが挙げられます。
① 「物の発明」の実施、「方法の発明」の実施の明確化が図られました(改正法第58条)。
② 出願権証明(譲受証書等)書類の添付が不要となりました(改正法第25条)。
③ 審査における「最後通知制度(最後の拒絶理由通知)」の新設(改正法第43条、49条)。
④ 訂正の規定の充実化(改正法第67条~第69条)。
⑤ 一事不再理規定の明確化(改正法第81条)。
以上