特許法改正草案の意見募集稿(第2回)の公開(中国)(抄録)
2015年4月1日、「中華人民共和国特許法改正草案(第2回)(以下、草案という)」に関する意見募集稿が公開されました。改正の主な内容について説明します。
(1)特許権保護の強化と権利者の合法的利益の維持について
特許権保護と法執行力の強化を重点的に改善しました。権利行使における「立証が難しい」という問題を解決するために、関連証拠規則を改善しています。具体的には、特許権侵害行為が成立した後、裁判所は、賠償額を確定するにあたり、権利者が既にできる限りの手段により立証し、特許権利侵害行為に関連する帳簿、資料が主に権利侵害者により掌握されている場合、裁判所は権利侵害者に特許権利侵害行為に関する帳簿、資料を提供するよう命じることができます。権利侵害者が正当な理由なく提供を拒むか、または、虚偽の帳簿、資料を提供した場合、裁判所は権利者の主張及び提供した証拠を参考として賠償額を決定することができます。権利行使における「賠償額が少ない」という問題を解決するために、故意の権利侵害に対して懲罰的損害賠償制度を設けます。具体的には、故意の侵害行為に対して裁判所は侵害行為の状況、規模、損害程度などに鑑みて、損害賠償額を2倍から3倍とすることができます。
(2)特許権の実施と運用の促進による特許価値の実現について
職務発明制度を整備し、発明創造・管理・運用に発生した問題を解決し、市場ニーズを誘導する特許技術移転のメカニズムを構築、整備し、イノベーションの促進し、特許権の実施と運用を推進します。技術革新の促進と発明者・設計者の積極性を充分に発揮するために、企業の職務を遂行し又は主に当該企業の物質的技術条件を利用して完成された発明創造の帰属は、契約優先の原則が適用されるように規定します。国立研究所や大学などの特許技術の事業化率が低いという問題を解決するために、所属機関が職務発明の実施を怠っている状況下においては、発明者または考案者は所属機関との協議に基づき独自に実施することができるようにします。専利と技術標準との関係を調整するために、権利者が国家技術標準の制定に参加する際、権利者による不当な権利行使によって公益を害することを防止するため、技術標準の特許権黙示許可制度を規定します。また特許権の権利濫用を防止する原則的規定を追加します。
(3)特許審査制度の整備と特許品質の向上について
中国の経済発展とイノベーションのニーズに適応させ、専利の保護範囲を適度に拡大します。
a. 部分意匠も保護することができます。
b. 飼育動物の疾病診断および治療方法により得られる特許保護の制限を解除します。
c. 出願人の利便性と特許品質を向上するため特許出願・実体審査・再審審査・無効審判を最適化します。
d. 意匠出願による国内優先権主張制度を追加し、優先権主張に係る規定を整備します。
e. 特許による再審審査と無効審判における審査原則をより明確にします。
f. 意匠権の保護年数を10年から15年まで延長します。
[情報元]上海専利商標事務所 Newsletter 201505
[担当]深見特許事務所 小田晃寛