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欧州単一特許を巡る最近の動向

(1)欧州連合司法裁判所(CJEU)は、単一特許規則および単一特許の翻訳言語規則の無効を求めるスペインの訴えを棄却しました(C-146/13, C-147/13)。
 単一特許の翻訳言語の取扱いをめぐっては、英語・独語、仏語を柱とする提案にスペインとイタリアが同意せず、全EU加盟国による合意が困難となっていました。そのため、EU理事会は両国を除く25加盟国が参加する単一特許制度の枠組み創設の承認を決定していました。これに対し、スペインとイタリアは2011年5月に上記決定の無効を求めてCJEUに提訴していました。この訴えは、2013年4月に棄却されています。
 続いて、「強化された協力」を実施するため、単一特許規則および翻訳言語規則が2012年12月にEU理事会と欧州議会とによって承認され、単一特許および単一特許裁判所の創設に向けた作業が開始されました。これに対して、スペインは、単一特許規則および単一特許の翻訳言語規則の無効を求めてCJEUに提訴していました。
 このたび、CJEUは、5015年5月5日に、スペインによる両訴えを棄却する二つの大合議判決を下しました。
(2)イタリアが欧州単一特許への参加を表明しました。
 イタリアは、当初、単一特許の枠組みに対する不参加を表明する一方で統一特許裁判所の協定には署名していました。
 CJEUによってスペインとイタリアの上記提訴が2013年4月に棄却されたこと、また、2015年5月5日にスペインの訴えが棄却されたことを受け、イタリアは、2015年5月28日のEU競争力理事会において、単一特許の枠組みへの参加を決定したことを表明しました。
 単一特許への参加により単一特許の効力がイタリアにも拡大され、出願人にとって単一特許取得の魅力が向上することになります。また、英国、ドイツ、フランスを含む13ヶ国が批准することで施行されることとなる単一特許の枠組みの準備作業に、今後、さらなる弾みがつくことが期待されます。

[情報元]CJEU Press Release No 49/15 (2015.5.5);EPO Blog等
[担当]深見特許事務所 丹羽愛深