より広い重複する範囲による新規性欠如を回避するためにクレームの範囲の重要性を証明する必要がある
クレームの数値範囲に対して先行技術がより広い重複範囲を開示する状況において、Pre-AIA 102条の下での新規性欠如を回避するために、CAFCは、特許権者がクレームされた数値範囲が発明の実施可能性(”operability of the invention”)にとって重要(critical)であるかどうかに関する事実の真正な問題(genuine question)を提起しなかったことを理由として、地裁による再審理を指示しました。
Ineos(原告)は、ボトルのスクリューキャップなどの成形品を形成するのに使用するポリエチレンを主成分とする組成物に関する特許を取得しています。先行技術のスクリューキャップのポリエチレン組成物は、スリップ特性を強化するための潤滑剤を利用しますが、接触した食品に悪臭を与えるという問題があります。原告の特許は、意図して悪臭の問題を除去したものであり、特定量のポリエチレン、潤滑剤および添加物をクレームしています。
Ineos(原告)は、原告の特許のクレームを侵害するとして、Berry Plasticsを提訴しました。Berry Plasticsは、原告の特許は、複数の先行技術によって新規性がないから無効であると主張しました。原告のクレームは、少なくとも1つの飽和脂肪酸アミド潤滑剤を0.05-0.5質量%有します。Berry Plasticsは、先行技術は、0.1-5質量%の重複する範囲を有する同じクラスの潤滑剤を開示していると主張しました。
地裁は、先行技術は、同じクラスの潤滑剤、および0.1-5質量%というより広い範囲の特定量を開示しているので、原告のクレームが先行技術から新規性がないとして、Berry Plastics(被告)に有利な判決を下しました。原告は、地裁の判決を不服として、CAFCへ提訴しました。
CAFCは、より広い重複する範囲を開示している先行技術による新規性欠如を避けるためには、クレームの範囲の重要性が証明されなければならないと述べました。CAFCはIneosは、先行技術の範囲がクレーム範囲に置き換えられたときにポリエチレン組成物の特性が変わるということを示さなかったという理由で、地裁の判決を支持しました。また、CAFCは、クレーム発明は、不必要な製造費用やスクリューキャップの傷を避けるために重要であるという証拠は、クレーム発明の操作性および機能性に関係がないので、採用できないと述べました。
[情報元]McDermott Will & Emery, IP Update, Vol.18, No.5, May 2015
[担当]深見特許事務所 西川信行