標準必須特許の合理的かつ非差別的な条件の実施許諾についての最初の控訴審判決
地方裁判所の非陪審裁判における実施料率の算定に異議申立する控訴審において、第9巡回控訴裁判所(9thC)は、標準必須特許(SEPs)の実施料率に関する初めての地方裁判所の判決を支持し、特許権者であるモトローラが非陪審審理を承諾し、地方裁判所の“思慮ある詳細な分析”は実施許諾についてのCAFCの最近の取組みに一致していると結論付けています。Microsoft Corp. v. Motorola, Inc. et al., Case No 14-35393(9th Cir, July 30, 2015)
標準化プロセスにおいて、多くの標準化団体は、特許権者に対してSEPsを合理的かつ非差別的(RAND)な条件で使用許諾することを求めています。この場合において、ワシントン州の西部地区の地方裁判所のRobarts判事は、SEPsのための適正な実施料率および範囲を決定するための多因子の枠組みを確立しました。
モトローラは、地方裁判所が非陪審裁判で実施料率の算定をしたことに対する異議の申立において、2つの論点を提起しました。第1に、モトローラは、地方裁判所は陪審前の審理で契約違反の論点から分離したRAND実施料率の論点を決定する法的権限に欠けていると論じました。第2に、地方裁判所の法的分析は、特許侵害に関するCAFCの先例に反すると主張しました。
第1の論点に対して、9thCは、モトローラが、申立または審理においてRAND実施料率に関して陪審審理が適切である旨の主張を提起していないことから、非陪審審理を肯定的に承諾したと認定しました。第2の論点に対して、9thCは、Robarts判事の決定が適正なRAND実施料率を確立するための初めての試みであり、地方裁判所はGeorgia-Pacific Corp. v. U. S. Plywood Cord.で確立され特許権侵害の場合の損害を決定するのに広く用いられている多因子テストの修正版に準拠しており、地方裁判所は仮想交渉ではなく部分的に現実の日に注目しているがそれは誤りではない、と認定しました。このように、9thCは、RAND条件付き特許について極めて柔軟に実施料率を認定しました。
<実務上の注意点>
9thCの決定は、Ericsson v. D-Linkにおける昨年のCAFCの決定を想起させ、RAND条件付きのSEPsの場合に裁判所が柔軟で事案に特有の取組みを適用することを認定しています。9thCおよびCAFCの両者は、今やGeorgia-Pacificまたはその他のテストを全ての状況に厳格に適用する見解を拒絶しています。
[情報元]McDermott IP Update, Vol. 18, No. 8, 2015年8月
[担当]深見特許事務所 小寺 覚